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若葉竜也「映画界に一石を投じる作品になる」 映画『ペナルティループ』主演・若葉竜也、監督・荒木伸二監督インタビュー

text by 斎藤香

主人公が復讐のループを自ら選択する、映画『ペナルティループ』が3月22日より公開される。荒木監督のオリジナルストーリーの映画化した今作の、主演・若葉竜也さんと荒木伸二監督にインタビューを敢行。今回は、作品への取り組み方、映画作りのこだわりなど、若葉さんと荒木監督にたっぷり語ってもらった。(取材・文:斎藤香)

「日本にも海外の俳優のような人がいるんだ」
今までにないループ映画へ

写真:宮城夏子
写真宮城夏子

――正直、一回観ただけでは理解が追いつかない、何度も観て答え合わせしたくなるようなループ映画でした。荒木監督は、今までにないループ映画を撮りたかったそうですね。

荒木伸二(以下、荒木)「ループ映画というジャンルの中の究極を作りたいという欲望をもとに取り組んだ作品です。『人数の町』(2020)の後に、新型コロナ感染症が発生して、毎日、自宅でループのような生活を送っていた頃に書きました。プロデューサーに見せては直してということを繰り返していたので、映画化までに3、4年は要したと思います」

――若葉竜也さんを主演にキャスティングしたのは荒木監督ですか?

荒木「そうです。僕は脚本を書くとき、あて書きはしないんですが、若葉さんと一緒に仕事をしたいという気持ちがあり、脚本を読んでいただきました。最初に会ったとき、若葉さんは『これは撮ってみないとわからない作品なのかな。いくら話を聞いてもわからない』と言って帰って行きました(笑)」。

――若葉さんのどういうところに惹かれていたのでしょうか?

荒木「大体みなさん『葛城事件』(2016)や『愛がなんだ』(2019)で好きになったという人が多いんですが、僕は『美しい星』(2017)で衝撃を受けて。若葉さんが登場したとき、その不気味さと美しさ、不可思議さに震えました。日本にもとうとうポール・ダノやジョナ・ヒルみたいな存在感で全てを打ち抜くタイプの役者が出てきたぞと。ワクワクした覚えがあります」

――若葉さんは冷酷な殺し屋になったかと思えば、殺人犯と打ち解けたりしていました。演じる上で悩んだり、気をつけたことはありますか?

若葉竜也(以下、若葉)「悩まされたのは、溝口(伊勢谷友介)を、一発で仕留められるところを何発も発砲するシーンです。台本のト書きに書いてあったときに、なぜだろうと考えました。それは人間が本来持っている暴力性、残虐性が表現されたシーンではないかと。

この映画ではVRが密接に関係しているので、肉体ありきの人間の行動ではない、本質が剥き出しになってしまった場面ではないかと。普通ならば、怒りの表現はもっと複雑化させて、抑制することも考えますが、この映画で僕が演じた岩森の冷酷さは人間の根源だと思います」

荒木「そんなことを考えて演じていたんですね」

若葉「監督に『なぜ何発も撃つのですか?』と聞いたら、面白くないじゃないですか。答えをもらったら、自ら天井を作ってしまうから。そうではなくて、監督がどう考えているのかを想像し、キャッチして、そのときのライブ感で演じた方が面白いと思ったんです」

――そのとき感じたことも芝居に活かしていったんですね。人間の根源という言葉に重みを感じます。

若葉「話が逸れますが、内閣府のHPにも掲載されている“ムーンショット計画”ってご存知ですか? 身体能力、認知能力、知覚能力をトップレベルにまで押し上げる技術を開発し、新しい生活様式を普及させるそうです。身体と脳から解放されるというのはどういうことだろう。人の感情や気持ちはどこに行ってしまうのだろう。『ペナルティループ』の話が来たとき、このことを思い出したんです。この映画のぶっ飛んだ設定もあながち嘘じゃない。そんなことも思いながら見ていただけたらと思います」

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