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俳人・瀧井孝作の私小説を映画化。高橋雄祐主演作『初めての女』6月公開&小平哲兵監督コメント到着

text by 編集部

俳人・瀧井孝作による私小説『俳人仲間』の一編を映画化。丁稚奉公に出された若き日の瀧井が、三味線芸者・菊と出会い、青春や恋を通して成長していく映画『初めての女』が、6月下旬より公開される。今回は、同作のあらすじやキャストプロフィール、そして小平哲兵監督のコメントをご紹介する。

まだ何者でもない青年が経験する ”はじまりの物語”

©TRYDENT PICTURES 2024

大正初期の飛騨高山、瀧井孝作は家業が傾いたことから丁稚奉公に出され悶々とした日々を過ごしていた、唯一の心の拠り所は俳句を書くこと。俳句仲間たちと句作に励んでいたある日、西洋料理屋の玉、三味線芸者の菊と出会う。孝作は今までにない感情に突き動かされるのであった。

本作は飛騨高山に残る歴史ある古い街並みや雄大な自然を舞台に、若かりし頃の瀧井孝作が経験する俳句仲間との青春、西洋料理屋の玉と三味線芸者の菊との初めての恋を通して青年が人間として成長していく様を描く。

原作は志賀直哉に師事し、芥川賞の選考委員を創設以来 46 年間務めた俳人・小説家である瀧井孝作が晩年に執筆した私小説『俳人仲間』の一編「初めての女」(日本文学大賞受賞作品)。『俳人仲間』の中でも瀧井が生まれ育った飛騨高山で俳句や様々な人と出会い、青年の成長を描いた作品を映画化。

主人公・瀧井孝作を演じるのは井筒和幸監督や上田慎一郎監督の作品に出演するなど今後の活躍が注目される高橋雄祐、まだ何者でもなかった青年が二人の女性と出会い理想と現実に葛藤する姿を繊細に演じた。

孝作が出会う西洋料理屋の玉役には数多くの話題作に出演している芋生遥、芸者の菊役には劇中で自身の特技である三味線も披露した三輪晴香。花も実もある大人の女性をそれぞれ演じた。

監督は元漁師という経歴を持ち、本作が劇場デビューとなる小平哲兵監督。高山市の人々の協力の元、作品を完成させた。

映画『初めての女』あらすじ

大正初期、飛騨山脈に囲まれた土地で生まれ育った青年・瀧井孝作は、父親の事業が失敗したことで丁稚奉公に出されてしまう。

悶々とした日々を過ごしていた孝作の唯一の拠り所は、俳人・河東碧梧桐の元で俳句を書くことであった。そんなある日、洋食屋の女中・玉と出会う。美しくどこか悲しげのあるその様子に、孝作は惹かれていく。

“堤長き並松月夜涼み行く”

孝作は、心からの玉への気持ちを句にしたためた。玉との距離が徐々に縮まった考作は、肌に当たる秋風の心地よさを感じていた。ある日、訪れた芸者小屋で菊と名乗る三味線芸者と出会う。

移り気な孝作は玉が去った後、菊にのめり込み始める。今まで感じたことがない感情に突き動かされる孝作は、次第に句から遠ざかってしまう…。

俳人・瀧井孝作(たきい こうさく)について

(1894年(明治27年) 4月4日 – 1984年(昭和59年) 11月21日)

日本の小説家・俳人であり、俳号は“折柴” (せっさい)である。明治27年(1894)、岐阜県生まれ。高山尋常小学校に入学後、母親が病没した12歳の時に高山町の魚市場の店員となり、家族が相次いで亡くなった後、魚問屋の隣家の文学青年柚原畦菫に俳句を学ぶ。

その後、高山を訪れた河東碧梧桐に出会い、俳句の指導を受ける。やがて大阪に出て、特許事務所に勤めるかたわら作句や散文執筆に励む。大正3年(1914)上京。翌年、俳誌「海紅」の編集助手となり、大正8年(1919)、碧梧桐の紹介で時事新報社文芸部記者となる。

芥川龍之介を識り、面会日に訪ねて創作の勉強をはじめる。大正9年(1920)「改造」の記者となり、この時初めて志賀直哉を訪問。以降、志賀直哉を生涯の師と仰ぐようになる。翌年「改造」の記者をやめ、作家活動に打ち込む。

《受賞歴》

1960年 昭和34年度読売文学賞 『碧童句集』
1966年 昭和43年度読売文学賞(小説賞) 『野趣』
1974年 日本文学大賞 『俳人仲間』
1974年 文化功労者
1975年 勲二等瑞宝章

監督から見た瀧井孝作とは?

瀧井孝作とは「純粋な人」だ ——。

彼は半世紀以上の過去の出来事を己の人生の晩年に具(つぶさ)に書いた。例えば、その日の夜空の月の満ち欠けや風の肌合い、愛した人の着物の柄や色合いに至るまでを事細かく書いてみせた。

それは、捉え方によっては記憶力が特段良かったとか、過去を美化し美しく描いたなどと思われるかもしれないが、様々な現地の人から彼の事を聞いていくうちに孝作にはきっと書き始める時に瞼を瞑れば昨日の様に有り有りと当時の事が見え、感じる事が出来たのだろうと思った。

即ち、孝作の純粋さとは人生の幸不幸も苦楽も全てを忘れずに受け入れて、一つ一つを心に掛ける事の出来る人だ。そして、初めての女も純粋な心に掛けた彼の一部そのものなのだろう。

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