安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を描いた映画『陰陽師0』が公開中。山﨑賢人、染谷将太を始めとした豪華キャストを迎え、今回は、本作の見どころと共に、主演を務めた山﨑賢人に感じる“新たな美しさ”について、これまで彼が演じた役と比較しながら解説していく。（文・あまのさき）【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

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【著者プロフィール：あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

なぜこのタイミングで”陰陽師”が実写されたのか

4月19日（金）より、夢枕獏原作の映画『陰陽師0』が公開となった。実在した最強の呪術師・安倍晴明を主人公とし、彼の知られざる学生時代を描く本作。

貴族たちが豪華絢爛に暮らし、一方で見えざるものの力に怯える。そんな平安の世を描いた『陰陽師0』は、まず何と言っても色彩が美しい。奈緒演じる皇族・徽子女王が暮らす部屋は開放的で、時に花びらが舞い、庭には遠巻きながら色とりどりの花々が望める。

帝（板垣李光人）が侍らす女性たちの着物の色は艶やかだ。華やかで、荘厳。この世の贅を尽くし、それでも下品には見えない塩梅でもって、貴族たちの生活を描き出す。

一方で、山﨑演じる晴明が過ごす陰陽寮は、限られた陰陽頭の座を懸けた争いを感じさせる湿っぽさが漂う。禍々しさとでも言おうか。晴明は、醍醐天皇の孫にあたる源博雅（染谷将太）からの相談を受けたことをきっかけに、陰陽寮全体を巻き込んだ陰謀に巻き込まれていく。

肉体に直接作用するのではなく、意識や思い込みといった目に見えないものに働きかけ、それが肉体にまで影響を及ぼす“呪”。真実と事実の違いを説き、幻覚を見抜き、呪を操る晴明は、次から次へと溢れ出る情報に踊らされがちな今の時代にこそ必要な眼差しを持っている。このタイミングでの『陰陽師0』実写化も納得だ。