山﨑賢人が魅せる“新たな美しさ”
そもそも、『陰陽師0』映画化の一報を受けてなによりも驚いたのは、山﨑賢人が主演を務めるという点だ。ここ数年だけでも、『キングダム』シリーズ(2018〜)や『ゴールデンカムイ』(2024)など、不動の人気を誇る原作の映像化作品の主演を立て続けに務めている。
もはや彼の人気と実力を疑う者はいない。どうしたって人々の耳目を集めてしまう存在感は、圧倒的主人公としてふさわしい。それでも、ここへきての安倍晴明だ。山﨑の双肩にかけられている期待、プレッシャーはこちらが推し量ることができないほど大きいに違いない。そう考えると期待しつつ申し訳ない気持ちにもなる。
先述の通り、これまでさまざまな“戦う主人公”を演じてきた山﨑だが、目の前に現れた屈強な敵をなぎ倒していくこれまでの主人公たちと晴明は一線を画す。服装も、到底動きやすいものとは言い難い。
だが、それゆえに晴明という役を纏った山﨑に、“新たな美しさ”を垣間見た。
数々の主演作でアクションの下地がある山﨑から発せられるアクションは迫力がある。そこで垣間見える、しっかりとした基盤があるからこそ、彼の動きには無駄がなく、静かで美しい。この美しさこそ、筆者が山﨑賢人に感じた“新たな美しさ”だ。
『キングダム』シリーズでは亡き友との約束を果たすために大将軍を目指す青年・信を、『ゴールデンカムイ』では金塊を追い求め戦い続ける、愛を秘めた元陸軍兵・不死身の杉元を体現した。いずれの役も、恵まれた生まれではなく、常に血生臭さがつきまとうことが今作『陰陽師0』との違いだ。