「見上愛という俳優に出会えたことで“10年寝かせた甲斐があった”」映画『不死身ラヴァーズ』松居大悟監督、単独インタビュー
高木ユーナによるコミックを原作とし、松居大悟監督が10年以上に渡り温め続けてきた渾身のラブストーリー『不死身ラヴァーズ』が5月10日(金)より公開される。今回は、10年越しに本作の企画を実現させた松居大悟監督へのインタビューをお届け。見上愛、佐藤寛太、⻘木柚らとの共同作業、作品に込めた思いについて伺った。(取材・文:山田剛志)
漫画が持っていた可能性を映画によって形にする。
10年越しの悲願だった伝説のコミックの映画化
―――松居監督は、10年間もの間、本作の原作となった高木ユーナさんの同名コミックを映画化したいというお気持ちがあったそうですね。原作コミックのどのような点に惹かれましたか?
「初めて読んだのは2013年だったんですけど、『生命力がとんでもない』というのが最初の感想で。両想いになったら消えるっていうトリッキーな設定もそうだけど、説明的なものを排除した作りが魅力的だなと。すぐに映画化したいと思って動いたんですけど、その時は諸般の事情で流れてしまって」
―――本作では、幸福なだけではない厄介な面も含め、人を好きになることにまつわる多様な側面が繊細に描かれていると思いました。恋愛のエッセンスをギュッと凝縮させた作品になっていますね。
「そうですね。人を好きになる過程を描く作品は多いですけど、今回は好きであるというところからスタートして『好きだからこそ、どうするか』っていうところが重要で。大学で“じゅん”に出会った時、“りの”がどう振舞うか。ウンウンとそこを見つめて作りました。これは今の原作にはない展開なんですけど」
―――原作にはない要素といえば、男女の設定が入れ変わっているという点と、好きな相手が消えるという設定にひねりを加えて本人が消えてしまうという点。この2点で大胆なアレンジを加えていますね。
「原作は連載途中で終わってしまって、高木先生から『本当は最終回で描きたかったエピソードがある』と伺って。内容を訊いたところ、彼女と出会った後、今度は自分が消えてしまう、という話だったんです。それを聞いた時とても良いなと思って。映画としてそうした展開を成立させるためにどうすればいいか、スタッフみんなで知恵を絞りました」
―――高木ユーナさんの原作で果たせなかった想いが後半の展開の着想源になっていたのですね。
「そう。漫画では描かれなかったけど、漫画が持っていた可能性が映画によって形になるなら、これほど良いことはないなと」
―――脚本を書いて改稿のたびに高木さんに見せるという手続きを踏まれたのでしょうか?
「毎回ではありませんでしたが、僕、共同脚本の大野敏哉さん、プロデューサー陣で煮詰めて『これだろう』ってなった段階でご確認いただく形で、脚本づくりを進めていきました」
―――かつて一度『不死身ラヴァーズ』映画化の企画が頓挫して、10年越しに念願が叶ったわけですが、心のつかえが取れたのではないかと想像します。
「10年前、諸々の理由で企画を止めましょうってなった時は申し訳ない気持ちと悔しい気持ちでいっぱいでした。漫画で描けなかった物語が、映画でも実現せずっていう。心苦しさが自分の中に凄くあって。
それから映画業界を辞めずにずっと続けていく中で、『何かやってみたい作品ないですか?』って言われるたびに、『不死身ラヴァーズ』って言い続けてきました。そうしたら今回メ〜テレさんに『面白いですね』って言っていただけて。先生に『お待たせしました』の一言が言えました」