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見上愛という俳優に出会えたことで
「10年寝かせた甲斐があった」

©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社
©2024不死身ラヴァーズ製作委員会 ©高木ユーナ講談社

――― “りの”の気持ちに感情移入をしてもらうというよりかは、映画の構造を理解してもらった上でそれを楽しんでもらえるように物語を構成なさったのですね。一方で、我々観客は“りの”に強烈に惹きつけられるわけです。それは演じた見上愛さんの力が大きいと思います。彼女のお芝居に触れて、脚本執筆時の想像を超えた瞬間はありましたか?

「ありました。そんな瞬間ばかりでした」

―――撮影の早い段階で『見上さんなら大丈夫』と思われたのでしょうか?

「オーディションの時点からですね。見上愛さんは、なんて言うんですかね…命の塊みたいなお芝居をされていて。

実はまだその時は“じゅん”が主人公で“りの”が消えるという設定だったんですけど、オーディション後に『見上さんが追いかける話がいい』と思って、男女を入れ替えたんです。

先ほども話したとおり、企画が流れた当時は落胆しましたけど、見上愛という俳優に出会えたことで『10年寝かせた甲斐があった』という心境になれましたね」

―――今回、劇中歌として、GO!GO!7188の楽曲「C7」をフィーチャーされていますね。

「これもきっかけは見上さんなんですよ。見上さんとお話した時に『軽音部の設定なんです』って言ったら、彼女は学生時代バンドやっていたみたいで。“十八番はGO!GO!7188の『C7』です”って言われたんです。僕の方が世代なので。歌詞を思い浮かべたらまんま『不死身ラヴァーズ』。『これだな』と思って実質的に映画のテーマソングになりました」

―――なんと! 作品の世界観に合わせて松居監督が選曲されたものだと思っていました。歌詞も凄くリンクしていますし。

「そうなんですよ。お父さんの影響で聴いたのがきっかけらしいです」

―――駅の構内で弾き語りするシーンも素晴らしかったです。

「あれは元々台本になくて足したんですよ。バーベキュー帰りの駅の構内、2人が別れるシーンの階段が印象的だったので。

『ブルーバレンタイン』(2010)のライアン・ゴスリングが飲みながら歩いていて、どうでもいい店の前でちょっと歌って酒飲むシーンがあるじゃないですか?あれが凄く好きで。個人的にどうでもいい場所で凄く大事な感情を表現するみたいなシーンにグッとくるものがあって」

―――リチャード・リンクレイター監督の『ビフォア・ミッドナイト』(2013)でジュリー・デルピーがギターを弾いて歌い出すシーンを思い出しました。

「それも近いですね!音楽は自分の中で大きいので、どう使うかは入念に考えました」

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