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「話せば最初の5分で分かる」個性的なキャラクターの作り方

写真: 武馬玲子
写真 武馬玲子

―――本作にも登場しますが、堤監督の作品はコンクリート打ちっぱなしの廃墟のような場所で撮影されている印象が強くあり、無味簡素な空間とそこで繰り広げられるコミカルさの対比が面白いと感じます。なぜこのような場所で撮影されるのでしょうか?

「昼、夜が分からないからです(笑)。大体私たちのスケジュールは昼だったら昼、夜だったら夜と制約が厳しくて、とても昼間の間に撮りきれなかったりする。その場合に次の日やるのか内容を切るのかと余計なことを考えなきゃいけない。

しかしこういう場所では気にせずに、広陵たる背景ということで使用出来る。かつて僕はバラエティーのディレクターでありながら、ビデオクリップの仕事がめちゃくちゃ多かった。ビデオクリップの撮影って大体廃墟じゃないですか。だからこういうところの撮影は慣れてるし、想像出来るということもありますね」

―――どの作品にも印象深いキャラクターが登場しますが、役者の個性の見つけ方や、演技の引き出し方の秘訣は何ですか?

「どんな俳優さんでも話せば最初の5分で分かります。仲間由紀恵さんは会話のキャチボールの中で、笑いがいける人だなと見えてくる。そうするとしゃなりとした美女でやるのか、美女の顔から大きく崩していくのかと言ったら後者になるわけで。阿部寛さんも然りですね。一方で中谷美紀さんはどこか美の方が勝ってたりする。いずれにせよ、面白でいくか、真面目でいくか、そのさじ加減みたいなところはやっぱり話をして気づきますね。

ただ渡部篤郎さんは全く分からなかった(笑)。やってく中で大馬鹿なキャラが出来るんだなと思って、昔の松田優作さんがオシャレでありながらはしゃいでるイメージを『ケイゾク』でやってもらいました。最近はキャラクターフリーの作品があまりなく、原作モノなどに嵌っていただくことの方が多いので、キャラクターのバックボーンなどを説明してその中でどう作っていくか、といった個性の作りの方が多いですね」

―――本作をこれから観る方にメッセージをお願いします。

「大変不思議な作品なんですよ。通常の映画的醍醐味とか、活劇の面白さとか、精神的高揚感とか、そういうものが欲しいなと思う方には是非観て欲しい!(笑)。そんなの一切ない中、言葉の応酬だけである種の高いところに行っているので、それを体感していただきたい。

こういう作りの映画もあるんだなっていう意味でご覧いただきたいと思うし、昨今AIというのは大問題になっています。アンドロイド型ロボットが人間の是非を語るという映画ですが、いわゆるSFモノに興味のある方はもちろんお越しいただきたいですし、ボーカロイドがいいエンディングになっているので、初音ミクファンの方にもお届けしたい。もちろんspiくんのファンの方には、こんなspiくんが観られるのかという意味で面白いと思いますし、僕はあんまり自分の型を決めるタイプの映画監督ではないので、『またこういう卑怯な手で来たか』と思いながらご覧いただけるといいかなという風に思うわけです。是非劇場でご覧ください」

(取材・文:福田桃奈)

【作品情報】

『SINGULA』
出演:spi
監督:堤幸彦
脚本・原案:「SINGULA」一ノ瀬京介
主題歌:「イフ」r-906 feat. 初音ミク
配給:ティ・ジョイ
公式サイト

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