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林監督「今回の映画では、親側の主張はなるべく入れないようにしようと思った」3人の登場人物が父親と向き合う姿を描く

林知亜季監督。写真:武馬玲子

林知亜季監督。写真:武馬玲子

 

―――本作では、藤原さんが演じた稔、義山さんが演じたタケ、さらに鈴木セイナさんが演じた家出少女の桜子。メインの登場人物3人とそれぞれの父親との関係がキーポイントになっていますね。稔が桜子の父親に身代金を要求するのも、彼は別にお金が欲しいわけではなくて、桜子の父親を通して自分の父親に問いを投げかけているのではないかと思いました。

林「今言ってくれたとおり、稔は本人が気づいているかは別にして、自分の父親に思いをぶつけたいけど叶わない。そうした思いを桜子の父親にぶつけているという側面があります。

身代金の値段を桜子に決めさせるのも、ある意味ちょっと残酷ですよね。でも季節が演じてくれたらそういう残酷な部分が露呈するところも嫌らしいシーンにならないと信じて脚本に書きました」

――― 一連のシーンにおける藤原さんのお芝居には焦燥感があって「この人、ただお金が欲しいだけじゃないんだな」ということがしっかり伝わります。

藤原「稔は父親のことを知らない人。僕と稔には相違点も多いですけど、どちらかというと僕も父親とのコミュニケーションは薄かったほうです。

桜子の父親に自分の父親を投影するのもそうですし、大人を試してみたいという思いもあった気がします。あと、タケが父親と仲が良いということに対しても、言葉には出さないけども複雑な感情を抱いている」

―――3人それぞれが父親的なものに向き合うスタンスの差異が、それぞれのキャラクターと関係性を際立たせていて、興味深かったです。特徴的だと思ったのは、親的な存在が登場はするのだけれど、正面からは映されないという点です。こうしたカメラワークにはどのような意図を込められましたか?

林「今回の映画では、親側の主張はなるべく入れないようにしようと思ったんですよね。親側が子供たちをどう思っているのかはほんの一滴、二滴くらいにして、子供側が親をどう見ているのか、どういう影響を被っているのかを描きたかった。家族というよりかは親子の話にしたくて。これも複数あるテーマの一つに過ぎないのですが、そのあたりは意識しました」

―――親側が正面から映されない代わりにと言ったらあれですが、桜子が路上で女性の絵を描くシーンでは、この女性を正面から撮っておられて、ハッとしました。

林「嬉しいですね」

毎熊「あのシーンは凄くこだわって、編集も結構試行錯誤したんですよね」

―――毎熊さんからみた、林監督の演出の特徴はどのようなところでしょうか?

毎熊「役者に演技指導することを演出と言うのであれば、林さんには演出がないと言えばないですね。重要なのは、その場で起こっていることをどのように切り取るか。

例えば、林さんは画面の手前で起こっていることを奥にフォーカスして撮ったりもするので、その辺の感覚が一番の魅力だと思っています。だから、林さんの作品に出演することは、役者にとって共同作業に近いと言いますか。どう演じるかは役者が決める。それをどう切り取るかは林さんが決める。

現場で『これやったら面白いかな』と思ってトライしたお芝居は、ちゃんと撮ってくれているし、ちゃんと使ってくれる。やっぱり感覚的に共鳴する部分が多いから一緒にやれているのだと思います」

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