藤原季節「撮影時に自分の苦しみをダイレクトに放出できた」嘘偽りのないストレートな演技について
――― 毎熊さんからみた役者・藤原季節の魅力についても教えてください。
毎熊「季節とは出会って11年くらい経ちますけど、その時々で発している魅力の質が違うんですよね。『東京ランドマーク』を撮っていた頃の季節は、色々苦しかったんだろうと思うんですけど、内に抱えている不安や少し尖っている部分、根っこにある優しさ…それが役にプラスアルファで確実に映っている。それは季節の芝居に嘘がないからだと思います。
言ってしまえば我々の仕事は作り物を演じることですけど、季節の場合、どの役を演じていても、その時々の彼の嘘偽りのないストレートな気持ちがキャラクターに反映されている。そこは役者としてすごく魅力的だと思います」
藤原「ありがとうございます。『東京ランドマーク』に関して言えば、確かに自分で見直しても、あの時自分が何に苦しんでいたのか、観ていてありありと思い出せるんですよ。それは撮影時に自分の苦しみをダイレクトに放出できたからだと思います。今もそれが出来ているかと言われたら心もとないのですけど…」
―――当時の藤原さんが抱えていた葛藤を言葉にするとどのようなものになりますか?
藤原「自分の居場所ってどこにあるんだろうっていう根なし草の気分。当時、迷子になってしまった感覚というのが常に付きまとっていて、ふと消えてしまいたくなる瞬間もあったりして。そういう気持ちが全部稔に乗っかっている気がしますね」
―――本作を観た上で藤原さんのお話を伺うと、「今、この瞬間の藤原季節をすぐにでも撮らなければいけない」と思われた林監督の気持ちが少しわかる気がします。2018年に撮影が行われて、2024年に公開される運びになりました。公開までに6年の歳月を必要とした理由は何でしたか?
林「何回作っても毎熊くんが全然納得いってくれなくて…」
毎熊、藤原「(笑)」
―――編集バージョンごとに観てもらっていたのでしょうか?
林「そうですね」
毎熊「はじめ純粋に脚本どおりに編集したバージョンが4時間弱あって。さすがにこれは映画館でかけるのは難しいだろうと。なので、4時間バージョンのいい部分だけを掬いとれないかと、Engawaメンバーで何度も編集を見直して、大体90分近くまで刈り込んだ段階で『これ以上は言うことがないな』となったんですよ。
ただ、何かが確実に一つ、二つは足りなくて。それを見つけることができるのは監督である林さんしかいない。おそらくそこからが林さんにとって一番しんどい時間だったんじゃないかな」
―――林監督が編集作業をしていて、ブレイクスルーとなった瞬間はありましたか?
林「それに関してはカッコいい答えはなくて、単純に納期が決まったというのが大きくて。締め切りが決まったのだから、好きにやっちゃおうという気持ちになれたんです。それで好きにやったら、毎熊くんも喜んでくれているし、良かったなと。
思い返すと、毎熊くんの意見は厳しかったですが、裏を返すと真剣に作品に向き合ってくれたということ。最終的に厳しい目を納得させられるような作品を仕上げることができてよかったなと思っています」
(取材・文:山田剛志)
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