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『バタリアン』から『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』まで
随所にみられるオマージュシーンについて

写真:武馬玲子

写真:武馬玲子

 

――今回の映画は、隙間風や焚火が燃える音といった音の演出もサスペンスフルで、崇高な自然とちっぽけな人間の愚かさが見事な対比を成していると感じました。

「ありがとうございます。音にはこだわっていて、はじめは劇半音楽をつけずに建物がきしむ音や焚火の音といった環境音のみで緊張感を演出できるんじゃないかとも考えていました」

――浅井はだんだんと視覚に支障をきたしはじめますが、視界が悪くなるほど観ている人はより耳を研ぎ澄ますようになるのかな、と。

「そうですね。作中では、浅井が最後にとある状況に陥るんですが、ありえないものが見えたり、常識では考えられないものが聞こえたり見えたりというのは、演出の匙加減でいくらでもできてしまう。特に音の場合は、無意識レベルで観客に認識させられるので、最後まで知恵を絞って考えましたね」

―――今まで数々の漫画を映画になさっていますが、漫画を映画に落とし込む上で共通して意識されていることはありますか?

「毎回バラバラで作品によるかな。でも本当に俺、漫画原作が多いですよね」

――くらもちふさこさんの同名漫画を原作にした『天然コケッコー』(2007)のラストカットでは、相米慎二『お引越し』(1993)のラストカットにオマージュを捧げていました。漫画を映画にする上で必要な演出を映画史的な記憶からその都度引き出していらっしゃる印象があります。

「そうですね。映画の記憶から引っ張ってくることは多いですね。特に今回はホラーテイストということもあり、あ、ここ『バタリアン』(1985)っぽいなとか。浅井がとあるアクションをするシーンでは、現場でも『ここ、バタリアンだよ』って言っていましたから。

あとは、ネタバレになるので詳述は避けますが、とある重要なシーンでは、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)にオマージュを捧げています。凄く好きな映画だったので、ずっとやりたいなと思っていたんです」

―――『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ですか! 言われてみると確かに構図がそっくりでしたね。これから映画をご覧になる方は、ぜひその辺りも気にして観るとより一層楽しめるかもしれません。

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