「世のおじさん達を啓蒙する映画」映画『蒲団』主演・斉藤陽一郎、単独インタビュー。冴えない中年男を熱演
山嵜晋平監督による映画『蒲団』が5月11日から公開中。主演には、現在53歳である名優・斉藤陽一郎が、脚本家としての仕事や、恋愛へ執着している冴えない中年男役を熱演した。今回は、斉藤氏に共演キャストたちとの裏話や、衝撃のラストシーンについて深くお話を伺った。(取材・文/ZAKKY)
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【斉藤陽一郎 プロフィール】
1970年生。1994年篠原哲雄監督作品『YOUNG&FINE』のオーディションにて主役に抜擢され俳優の道へ。青山真治監督による多くの作品に出演。映画『軒下のならず者みたいに』(2003)では主役を演じ、他、幅広く活躍中。
「問題提起となるような作品になれば…」
ーーー作品を拝見して思ったのは、主人公の竹中先生、切なすぎるということです。まず、この脚本を読み、竹中時雄を演じることになった時の、斉藤さんの感情をお聞きしたいです。
「うだつの上がらない、売れなくなった脚本家である中年のおじさんが、いびつな純愛に突き進んでいく感じが多分、監督やプロデューサーには、僕にぴったりだと思ってくれたんだろうなと感じましたね(笑)だから、ぜひやらせてくださいって、すぐに思いました」
ーーー脚本家の役を演じる上で、脚本を担当した中野太さんと話し合ったことはありますか?
「いや、特にお話はしませんでしたが、脚本家だからどうこうというわけではなく、傍から見たら普通にデスクワークをしている人として考えました。もちろん、デスクワークだけに限らない作家としての作業がある事は理解しつつも、頭の中で考えていることをアウトプットしている様の方を意識しました。」
ーーー失礼かもしれませんが、その姿はこれ以上なくハマッていました。
「そう思って頂けたのならうれしいです。時雄の心情は、僕の中でも冗談抜きでどこか腑に落ちるところもあるっていうか、わからないことでもないというところが大きかったです」
ーーーある種の共感を得たと。
「ええ。2022年に撮影をしたのですが、ハラスメント的なことや、コンプライアンスみたいなことに対して今まで以上に真剣に向き合わなくてはという気運が高まっていた時期だったと思うんです。で、今はもっとそういうことがあからさまに世の中の問題として噴出してきていると思うんですね。
そんな最中に僕は、竹中時雄となった姿が映し出されているわけですが、そんな、おじさんを楽しんでもらいつつも、ある種の世のおじさん達を啓蒙する映画みたいな側面ともあるだろうなと思っていて。今の時代ではアウトな表現も結構ありますし」
ーーー原作小説は、約100年前の話ですからね。
「原作は、さらにいびつなエロスに焦点が当たっているんですよね。ただ、調べたところ、当時も、物議をかもしていたらしいです。 現代とは、その意味合いはまたちょっと違うのかもしれないですけど。
竹中時雄という役を通して色んな意味で、問題提起となるような作品になるといいなという思いで現場には臨みました。」