「ピュアな純愛をしている男という感覚」
演じている間に感じる青春
ーーー時雄はすごくピュアな人なんだなという印象なのですが、演じてみた感触はいかがでしたか?
「もちろん演じている間は、ピュアな純愛をしている男という感覚でいましたが、これは大いなる勘違いでね。やっぱり奥さんもいるという家庭環境の中で、横山芳美(秋谷百音)という自分の弟子に恋をするわけですよ。
しかし、魔が差す瞬間っていうのは、別にこれは男性に限らず、女性でも有り得る話で。そこはなんか、コロッと落ちてしまう瞬間、何かが外れそうになってしまう瞬間の危うさって、誰でも起こることだと、今回演じながら思いました。だから、そこのリアリティーをどう醸し出せるかは、意識しました」
ーーー横山芳美が寝ている時の、時雄の何とも言えない行動は、息を飲むくらいのリアリティーさを感じました。
「嬉しいですが、恥ずかしいですね(笑)うん、時雄は残念な人だという思いもありながら、でも、その気持ち、どこかでわかるよということが男として感じられるキャラクターなんだと思います」
ーーーパートナーがいたとしても、他人に恋心を持ってしまうのはしょうがないですからね。
「それはそれとして、理性でその気持ちを留められるかという、自分の中でのせめぎ合いと言うかね。でも、そういった瞬間というのは、見方を変えれば苦しいけど、本人にとっては意外といい時間なんだとも思うんですよね。好きなものは、好きなんだ!というね」
ーーーあ~。すごくわかります。
「時雄の仕事場における屋上で横山芳美と一緒にいるシーンが、流れるBGMも含めて、すごく好きなんですよ。なんかもう、ただの汚いおじさんだったのに、一気に青春映画みたいになって」
ーーー何歳になっても、青春は感じられるんだなと、僕も最近、よく考えます。
「そうそう。あの屋上で空を見上げながら、撮影していて何とも言えぬ気持ちよさがありましたし、50代の僕でも、青春映画的な役を演じられるんだってね」