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「誰が見ても『こんな映画、他にない』と思ってもらえるような作品を目指していた」
渉というキャラクターの特異性について

俳優の坂東龍汰。写真:武馬玲子

俳優の坂東龍汰。写真:武馬玲子

 

―――坂東さんのお人柄、キャラクターが創作のヒントになったとのことですが、どのような部分に触発されたのか気になります。

坂東「内面の部分ではないでしょうか。それは英治を演じた髙橋里恩にも言えて。表面的な部分とまたちょっと違った、思考の核のようなものが描かれているのかなと」

二ノ宮「うん。確かに、そうですね」

―――言葉にしづらいとは思うのですが、二ノ宮監督が坂東さんの内面に見て取って、渉というキャラクターに反映させたものを言葉にするとしたら、どのようなものになりますでしょうか?

二ノ宮「なんていうんですかね…見てのとおり坂東君は明るくて好青年なんですけど、どんな人間にも色んな要素があって。表面に見えていない奥の部分がもしこうだったら…とイメージを膨らませていったという側面はあります」

坂東「僕のどこに渉的な要素を感じてもらえたのかわかりませんが、表面的な部分じゃなくて、人には見せていない部分を見てもらえたのかなと」

―――渉には身のこなしのレベルでも特徴があって、ほとんどのアクションがゆったりとしていますよね。例えば英治に父親の話を持ち出されて怒る場面でも、感情と体の動きが同期してないという印象を受けます。普通怒っている人はバッと動くところを凄くゆったりと動く。

坂東「でも渉の中では、あのスピードでも速いほうなんですよ。英治を見て『お前ホント殺すぞ』と言うところは、演じていて『こんなに速く動いていいのかな』と思って。でも『それでいい』と監督は言ってくれました」

二ノ宮「あのシーンは、(他のシーンの動きと)違いを出さなすぎてもダメだし、出しすぎてもダメ。本当に絶妙なところを演じていただきました」

坂東「意外と人間味があるんですよ、渉って。『殺すぞ』ってまず感情が乗ってるセリフだし。感情がないように見えて、実はめちゃめちゃ感情的な人間であるっていうことを演じていて感じましたね。3人で会話をする喫茶店の場面でも、英治に対して行きそうだけど行かない。フラストレーションがどんどん積み重なって、ある時、溜め込んだエネルギーが爆発する」

―――渉は渉なりに生のリズムを変化させていて、映画にはそれが克明に記録されていると。今回、事前にリハーサルはなさったのでしょうか?

坂東「すべてのシーンでリハーサルをやりました。ワンシーンワンカットもあったりするので、主にそういう部分を丁寧に。意識したのは、受けの芝居に徹する中で、英治や光則(清水尚弥)の言葉に表面的に反応するんじゃなくて、もっと内面的に心が動くように反応するということでした」

―――渉は序盤の公園のシーンで、子供に頬を突かれて笑いますけど、ある場面を除いて、その後のシーンでは笑顔を見せることはありません。公園のシーンで「笑う」というト書きは脚本に書かれていましたか?

坂東「書いてあります、ちゃんと。『笑う』って」

―――多くの映画では笑わない人物を登場させる場合、ストーリーの起承転結に合わせて、ここで笑えば観客の感情を揺さぶることができる、といった狙いが伴ったりするわけですが、本作ではそういう風になっていません。それはなぜでしょうか?

二ノ宮「とにかく今回は誰が見ても『こんな映画、他にない』と思ってもらえるような作品を目指していたんです。それは凄く考えたところ。そういうこともあって今回は、今まで観てきた映画の影響からいかに身を引き離すかを意識しました」

坂東「でも不思議と今回、“ここで笑ったら効くんじゃないか”みたいなことは、演じていて全然考えなかったですね。役者としてのエゴでそういう気持ちになることも時にはあるんですけど、今回に関してはそれがまったくなくて。むしろ最後まで何にもしない方が絶対にプラスになると。笑うこと以外にも、ちょっとした動きとか目線に関しても、渉がやれる最低限のこと以外は極力排除していく方向で演じました」

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