天性の女優・河合優実の「明晰さ」
――主演の河合優実さんの演技がとにかく素晴らしくて、「目の前で杏が生きている」というリアリティをひしひしと感じました。河合さんは、ドラマ「不適切にもほどがある!」で大きな注目を集めましたが、彼女を起用した理由はどのようなものでしたか?
「以前、河合さんは、僕のワークショップに参加してくれたことがありまして。当時は今ほど沢山の作品に出ているワケではありませんでしたが、モノが違うというか、只者ではない雰囲気がありました。で、ちょうど業界での評判が高まっている時に企画が持ち上がって、プロデューサー経由でお願いしました」
――私は、河合さんの演技の魅力は目の印象や声色だと思っているんですが、入江監督が思う河合さんの魅力はどんなところにありますか。
「一言では言い表せないですが、強いて言えば「脚本を読み込む深さ、明晰さ」ですね。基本的に役者さんは、まずは脚本を丁寧に読み込んで、それを土台に目や声といった身振りを組み立てていくと思うんですが、実際に演技をしてみると解釈が微妙に異なっていることもあります。ただ、彼女の場合はそれがまったくないんです。
特に今回は、若い女性が主人公なので、正直僕には描ききれなかった部分もあったんですが、そういった部分もしっかり補完して演じてくれて、杏というキャラクターにリアリティを与えてくれた。今回、彼女には相当助けられました」