河井青葉が体現する脆さと共依存関係
――作中では、杏の「毒親」役を河井青葉さんが演じられています。河井さんといえば、これまではどちらかというと清楚な役や堅い役が多い印象がありましたが、今回は真逆の振り切った演技を披露されています。この役に河井さんを起用された理由を教えてください。
「登場人物を記号的に描きたくなかったんです。確かに、“毒親”といわれるような人には、一目見て抑圧的なタイプもいるけど、一見すると美しくて上品なお母さんが、実は…という方がリアルな怖さがある。河井さんご自身はとても優しい方なので演じるのに苦労されていましたが、むしろ内面的な弱さや繊細さが露呈することで深みのある人間像になったと思っています」
――内面的な弱さといえば、母親が杏のことを「ママ」と呼んでいるのも印象的でした。
「これは、河合さんと話す中で決まった設定ですね。外から見ると、母親からDVを振るわれていれば、縁を切るほうが良いのではと考えがちです。ただ、杏はそれをしない。なぜかというと、杏自身、心の底で母親を心配しているからなんですね。
杏が母親に依存しているのと同じように、母親もまた杏に依存している。こう言った共依存のリアリティを、「ママ」という言葉で描写できればと思っていました」