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杏の庇護者・多々羅と傍観者・桐野

© 2023『あんのこと』製作委員会
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――作中には、杏の庇護者として、薬物更生の自助会を運営する型破りな刑事、多々羅(佐藤二朗)が登場します。作中では、取り調べ中にヨガを披露するなどかなり型破りな人物として描かれていますが、この役も実在の方がモデルになっているのでしょうか。

「はい。モデルとなった方は、多々羅同様、ある種のカリスマ性の持ち主で、自助会を運営していました。ちなみにヨガはオリジナルの設定で、実際は落語を披露していたようです。ただ、この方とは直接会えなくて、彼を知る記者の方から逸話を聞いてキャラクター造形の参考にしました」

――多々羅を演じている佐藤二朗さんは、入江監督が福田雄一さんと共同監督を務められたドラマ「天魔さんがゆく」(2013年、TBS系列)にも出演されています。前回はかなりコミカルな役でしたが、今回はかなりシリアスな役ですね。

「企画当初からプロデューサーに推薦をいただいていて、佐藤二朗さんのパンチ力のあるお芝居は、他人に遠慮しない「昭和のおじさん」的な刑事像にマッチするんじゃないかと思っていました。

佐藤さんはよくアドリブするイメージもあって多少心配もしていたのですが、現場では脚本を繊細に読み込んで抑制の効いた演技をしてくれました。1人の俳優でこんなに振り幅があるのかと驚きましたね」

――また、作中ではもう1人、自助会に潜入して多々羅の悪事を暴く週刊誌記者として、稲垣吾郎さん演じる桐野が登場します。この役も実際にモデルがいたのでしょうか。

「そうですね。稲垣さんは最後にキャスティングが決まったんですが、モデルになった記者さんは、稲垣さんにそっくりな中立的で冷静沈着な方でした。僕の中では記者って池袋とか赤羽が似合うおじさんというイメージだったので(笑)、かなり意外でしたね」

――傍観者でありながら杏と積極的に関わっていくという桐野の役は、演じる上でかなり難しかったのではないでしょうか。

「そうですね。ただ、稲垣さんご自身の映画全体をとらえる勘の良さに助けられて、真に迫ったキャラクターになったのかなと思います。ちなみに、桐野のモデルとなった方には、撮影前に脚本も読んでもらって、事実との照らし合わせもできたので、かなり助けていただきました」

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