ホラー映画ならではのサウンドデザイン
写真:武馬怜子
――今回の作品は、前作に出てきたモチーフの中でとりわけ「音」にフォーカスしている印象がありました。音をデザインする上で気をつけた点があれば教えてください。
「本作に限らずですが、緩急には気を遣いますね。ホラーって、音楽とか音でガンガン怖がらせることもできるんですが、連打するとつまらないし、お客さんも慣れてしまって、逆に怖さが半減してしまうんですよ。
具体的には、1回目の恐怖ポイントで衝撃的な音を当てた場合、2回目の恐怖ポイントではあえて音を当てなかったり、あるいは間を空けて恐怖ポイントを配置したり。そういった演出は、今回の作品でもかなり意識しました。
それに『ミンナのウタ』と今作では、10代の方にしか聞き取れない周波数のモスキート音を部分的に入れています。モスキート音は、僕ら中高年のスタッフも聞き取れないんですが、若い方なら聞き取ってくれるのではないか、と」
――音に関して言いますと、キーアイテムとして、カセットテープが出てきます。カセットテープ自体はホラー映画で頻出のアイテムですが、今の若い子どもたちには馴染みがないのではないかと思いました。
「確かにそうですね。ただ、必ずしも馴染みがあればいいというわけではない。むしろ、新しいアイテムを年配の僕らが無理して用いても若い層は浅はかさを見破れてしまう。知識としては把握しているけど触れたことがなく、古臭いモチーフの方が、新鮮で怖いという場合が往々にしてあると思います。
あと、やっぱりアナログメディアって怖いですからね。写真でも、鮮明なデジタル写真より古ぼけたおじいちゃんおばあちゃんの写真の方が不気味に感じたりしますから。そういったアナログならではの怖さは、今回の作品でも要所要所で活用しています」