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さなの記憶を表象する空間構造

写真:武馬怜子

写真:武馬怜子

――今回の作品は、音だけでなく空間演出も独特ですよね。例えば、あのコの家のシーンでは、ほのかがいるリビングは夜なのに、おばあちゃんがいる和室は明るくて、セミの声が響いている。また、ほのかとあのコの両親との会話シーンでは、セリフごとにピントが送られ、画面全体が3つの層に分かれているような印象が感じられる。個人的には、複数の空間をカットアップすることで、あのコ自身の記憶の構造を表現しているのかな、と感じました。

「よく気づかれましたね。僕自身、『呪怨』の頃から「記憶」をテーマに制作していて、地続きの空間なのに時間がずれていたり、人が突然現れたりと言ったように、異なる時空間をいじってつなげるという演出をよくやってきました。特に今回の作品は、舞台が学生の生活圏に限られているので、時間を錯綜させることで重層的な物語の面白さを案じてもらえたらと。

 こういった空間構造は、脚本の段階ですでに書き込んでいるんですが、観客の皆さんには、なにか違和感を感じ、怖さとミステリー要素を楽しんでもらえればいいかな、と考えています。ただ、逆に、年配の方には馴染み難いようで、『カットがつながってないじゃないか! 』なんて意見もいただいたりします。それはそれで受けとめますが、理屈で割り切れない想いや魂を描けるのが映画であり、ホラーやファンタジーだと思うので(笑)」

――カットアップされた時空間って、サイバースペース的というか、デジタル的な印象があります。だから、年配の方にはあまり理解できないのかも。

「そうかもしれないですね。その辺も、デジタルネイティブ世代へ向けた意識が働いたのかもしれませんし、元々僕は若い頃から理屈や概念を越えた物語が好きなので。勿論、他者の気持ちに訴えるには、語り口や構成/描写/展開の巧みさが必要になってきますけど」

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