ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 「世界に通用するホラー映画を日本から発信したい」『あのコはだぁれ?』清水崇監督インタビュー。主演・渋谷凪咲の魅力とは? » Page 4

ファンが育てるアイドルの人間力

写真:武馬怜子

写真:武馬怜子

――今回は主人公の君島ほのかを渋谷凪咲さんが演じられています。渋谷さんを起用された理由を教えてください。

「『牛首村』(2022)で主演を務めたKōki,さんもそうなんですが、演技力は未知数だけど、とにかく作品にも自分にも挑戦的で度量のある人と作品を作っていくのが好きなんですよね。もちろん、ベテランの方でも今までにない役に挑戦したいという前向きな方もいらっしゃるんですが、経歴を持てば持つほど、どうしても慣れや甘えが感じられて、否応無しに出てきてしまう。それは監督もなんで気を付けてますが。

 一方、渋谷さんは、ご存知のようにお笑い芸人さんにも気に入られてるし、お笑いに対する切り返しに長けています。なので、真逆のホラーに振り切ったら化けるんじゃないか、と。真逆…というか、僕の中ではほぼ同じ構成要素のジャンルなんですが。そういった思いから、今回オファーしました」

――一方、渋谷さんは、今回が初主演作品になります。演出される上で大変だったことがあれば教えてください。

「渋谷さんはとても真面目で、しかも、バラエティ番組で無茶ぶりへの対応力も身に着けているので、台本があるお芝居だとどうしてもはじめて話しているように見えないんです。なので、その点は毎回何度も『たった今、気持ちが動いて思わず出た言葉なんですよ! 』と言い聞かせながら、台詞の言い方や言葉尻を変えてみたり、必要不可欠な気持ちのニュアンスだけを確認したりしながら演出していました」

――渋谷さんはNMB出身の元アイドルで、『ミンナのウタ』で主演を務めたGENERATIONSの皆さんも、多くのファンを抱えたアーティストです。やはり彼らの「地肩の強さ」は、ファンの皆さんとの交流の中で培われていくものなんでしょうか。

「そうだと思います。アイドルやアーティストの皆さんは、多くのファンの方と日々接しているので、基本的に礼儀正しくて、同年代の若い方と比べても人間的にしっかりしている人が多い印象ですね。ファンの方々から自信をもらいながら、しかし奢らず、磨きぬいた笑顔や心身、技やパフォーマンスでファンにお返ししていくという立場の方々なので、役者として映画界に飛び込んできても役の人物像や作品中の立ち位置に関しての理解度は早い方が多い印象です。

 あと、ファンを連れて来てくれるのもありがたいですね。ホラー映画の場合、どうしても苦手な方が一定数いるんですが、推しのアイドルやアーティストが出演していると、苦手な方も観てくれて、それを機にホラーへの印象や理解度も変わってくれたりする。そういった関係性は、ずっと大切にしていきたいですね。

 世間はジャンルやスター性、出自の畑違いなどで一方的な見方に固執し、偏見や差別を抱きがちですが、そこを越える意外性や面白さ、人や世界の多面性を映すのも映画が持ちうる力や魅力だし、特にホラーなんて根っから偏見や差別あってこその得意なジャンルの娯楽だと思うので」

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!