「物作りの同志」夫婦での映画づくりとキャスティングについて

―――本作は特殊メイクアップアーティストであり、あすかさんのパートナーでもある梅沢壮一さんが監督をされていますが、監督と内容についてディスカッションはされましたか？

「全くないです。梅沢が映画を作る時は、『ちょっと台本書きに行ってくるわ』から始まり、そういう日がだんだん多くなってくると、映画を撮ろうとしてるんだなとわかる。たまに読ませてもらえるのですが、だからと言ってそれについてディスカッションするわけでははないですね。

ある時、“わかっていただろうけどね”という含みを持たせながら『実はこの役をやってもらいたいんだ』と製本されたシナリオを渡されて、そこで改めて読む。私の中では、特殊メイクアップアーティストとしての彼と時間を紡いできたので、監督というよりも、物作りをする同志っていう感覚なんです」

―――役者の皆さんが持つ個性が作品を軽やかにしつつも、シュールなホラーとしての雰囲気もしっかり引き立てているように感じました。

「本当にそうですね。完成した作品を観た時に、俳優選びに成功したなと思いました。特に、島さん役を演じた石澤美和さんは本当に表情豊かにセリフを言ってくださるし、セリフと体が連動していることの美しさは芸術だなって思いましたね。もちろんセリフを言うことが俳優の仕事なんだけど、そこに人の動作が伴ってくると、なんて面白く、美しいんだろうと思いましたし、舞台劇を観ているようでした。

それに真剣なシーンなんだけど、笑ってしまうんですよね。俳優としては笑ってはいけないんだけれど、私が笑ってしまうということは、その瞬間、観客として彼女を見てしまったんだなって、磁石のように心が引っ張られちゃったんだなと思い、本当に素晴らしい女優さんだなと思いました」

―――あすかさんと石澤さんとの掛け合いのシーンで、あすかさんが「靴」と言うところが、とてもコミカルで面白かったです。

「あのシーンは、何度リハーサルをやっても笑ってしまうので、笑いを止めるために唇に集中して動きを止めてるんです。『監督早くカットかけて！』って思いながら（笑）」

―――あれは演出ではなかったんですね！

「ハマっちゃったんですよね。それまではちゃんとできてたんだけど、1回笑うとゲラなので、『もう止められない！ でも気持ちを鎮めている暇なんてない、しょうがない！』となり、あの表現に辿り着きました（笑）」