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「“この役すごく心地いい”は危険」
芝居をする上での心構え

写真:浜瀬将樹

写真:浜瀬将樹

―――ユリのキャラクターが前半と後半で一変するのがとてもスリリングでした。個人的には後半のユリは、映画『冷たい熱帯魚』を思い出しました。あすかさんが狂気を帯びた役柄を演じると、背筋が凍るほど怖いのですが、どういった意識で演じられていますか?

「なんかできるんですよね(笑)。考えたことなかったから答えになってるか分からないですけど、11歳でこの世界に入った時からずっと自分の目の前にもう1人の自分がいて、360度を見ている感覚が仕事になると常にあるんです。そのもう1人の自分が『もっと体の位置をこうやって』とか指示してくる感覚があって。

エキセントリックな役の時にもそれが良いように作用して、狂気めいた何かがプラスされるのかもしれません。だから40手前までああいった役に巡り会えて、いくつも作品を残すことができたんだろうなって思いますね」

―――常に客観的な自分がいると。

「います。だけどそれプラス『なんかこの役すごく居心地がいい。何にも考えずにできそう』と思うのは危険なんです。自分の持っている引き出しを簡単に使って、役を掘り下げる作業を疎かにしているということの現れなので。そうなったらブレーキをかけて、『気をつけろよ』って自分に言い聞かせて向き合うようにしてます」

―――予定調和の芝居にしたくないという思いの現れかと思います。ブレーキをかけて、次にどんなアクションを起こしますか?

「セリフをしっかり言うこと。それもただ喋るんじゃなくて、テレビだったら視聴者、映画の場合は観客、舞台だったら目の前にいるお客様に伝えること。私は言葉を伝える人だという意識を自分に植え付けて、演技に臨んでいますね」

―――セリフがない時はどうなさっていますか?

「セリフがない時は逆に心地いい時はないんです。セリフがないからこそ、所作1つ1つで感情を伝えることができるので、気を張ってるんですよね。手の置き方にしても、胸から3段階に分けて下に下ろすことによって、少女・結婚した女性・老女、と3つの表現ができるんです。セリフがない時は、一層アンテナを張るので、心地がいい状態に陥らないんです」

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