「新鮮さも保つようにする」
現場で意識すること
―――本作は編集にもこだわりを感じ、とてもワクワクしました。完成した作品を観て、いかがでしたか?
「ユリのバックグラウンドがちゃんと映像化されていると思いました。例えば、ユリが部屋でスパゲッティを食べるシーンは、ドキュメンタリー番組でありながらも、ユリの過去に繋がっている。
あとは山を切り開いて街が出来上がっていく過程を見せることで、ユリの成長も表現されているんです。山が切り開かれて街ができていくことは自然破壊かもしれない。でも森にはユリの過去があり、そこから成長した今に繋がっている。彼女の歩んできた人生を見ているという捉え方もできるのかなと。そこからタイトル『歩女』にも繋がるんじゃないかと、そう思いました」
―――何度も鑑賞することによって、また違った見え方ができる作品ですよね。映像の演技は、大方テストが行われてから実際に撮影が行われますが、テストから本番まで、どのような意識を持たれていますか?
「テスト1回目は、色んな手順を踏まなければいけないので、まずはそれを覚える作業。それと全体の空間を捉え、この部屋にどのくらい住んでいたのか、どういうことがあったのか、想像を巡らせて動く。2回目は、動きとセリフを連動させ、3回目で完全体に仕上げるように自分に課しています。
最近はリハーサルを沢山やる方もいらっしゃるので、そういう時は、オッケーをもらったことと同じことをやる。精密機械ではないですから、多少なりとも違いは出てしまうんですけど、人の目、耳で捉えた時に大差がなく見えるよう保つようにしています」
―――何度も繰り返すことで、ご自身の中で新鮮さは失われないですか?
「新鮮さも保つようにするんです。例えば高い声で『えー!』って言ったなら、どのくらいのレベルでやっていたかを記憶しておく。でも気持ちが追いつかない時は、声だけで上げちゃう。本当はいけないんですけど、どうしても冷めちゃう時もあるんです。そういう時は声のトーンを上げて修正するんです」