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一緒に作り上げた“ユカちゃん”像

©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会

©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会

―――鮎川龍二ことユカちゃんは、自分の「好き」を表現することが、世間からも家族からも受け入れられずに苦しむキャラクターです。この難しい役に、高橋文哉さんをキャスティングした理由をお聞きできればと思います。

「原作だと女の子に間違われるぐらい女性っぽいキャラクターですから、実際に女性をキャスティングした方がいいのか、それとも原作通りジェンダーレスな方をキャスティングした方がいいのか、プロデューサーたちと非常に悩みました。ですが、ユカちゃんの芯の強さ、弱いからこそ強くあろうとする表情や目つきを表現できることが最も重要なんじゃないかと考えたんです。だから、実際の性別云々っていうのではなく、人の脆さと強さが共存することを理解し、考えて表現できる高橋さんにお願いしました」

―――八虎がユカちゃんと水族館に行った際、「自分の好きなものが自分を守ってくれるんじゃないの?」という高橋さんの震えた声に、思わず胸が締め付けられました。高橋さんにしか演じることのできないユカちゃんを作るために、高橋さんとはどのような会話がありましたか?

「漫画だと、どういう声なのか、どれくらいの声の高さなのか、分からないじゃないですか。声や喋り方などは、シーンによって、どれぐらい女性っぽくするのかをかなり練り、その会話の中で、ちょうどいいところを探っていきました。あとは、うつむき加減なども。高橋君は、多分癖で少し上向いちゃうんですよ。そうすると女性っぽくないから下げてもらったり、あと歩き方とか立ち方とかもですね」

―――八虎とユカちゃんの小田原への逃避行は、仲のいい関係ではない思春期の学生が自分をさらけ出して話をする重要なシーンです。このシーンを撮るうえで、眞栄田さんと高橋さんとは、どのようなディスカッションがあったのでしょうか?

「このシーンでは、等身大の高校生が情けない姿を見せ合って会話をします。裸のシーンなので、現場にも緊張感がありましたし、自分の負の感情と真正面から向き合い表現しつつ、心の内をさらけ出すようにという話をしました」

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