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映画だからこそできる表現力

映画『ブルーピリオド』
メイキングカット

―――個人的に、予備校の課題である『縁』について考える場面がバスの中だったことが非常に興味深く、気になりました。

「絵を学び始めることで、今までの日常の中の視点が変化するということをやりたかったんです。だから日常の中である必然はあってと考えると…武蔵美からの帰り道のバスがいいかなと思いました」

―――渋谷の早朝が空気の澄んだ青色に対して、武蔵野美術大学の帰り道、課題である『縁』についてイメージを膨らませた時は燃え上がるマグマのような赤色でした。八虎の感情が高ぶった際に色を効果的に使用していると思ったのですが、色の演出に対して、芸大の合否を両親に伝える場面では非常にあっさりとしていました。これにはどんな意図がありましたか?

「八虎にとってのゴールって、あの段階では受かる受からないというよりは、自分の絵を描くっていうことなんですよね。それがもう達成できているので、合否はある種のボーナスだと思うんです。受かったかどうかよりも、自分だけの感動を得ることができたことの方が重要なんです」

―――これまで萩原監督は、原作が漫画である映画を多く手掛けられていますが、脚本に落とし込む上でどのようなことを意識していますか?

「主人公の葛藤を、どう描くか。キャラクターを描くということを意識しています。原作から人気のあるキャラクターを似せて撮ったり、刺さる言葉を並べたりするよりは、彼の心にある感情の流れを抜き取って表現するように心掛けています」

―――先ほどお聞きした、八虎が「人を避けて歩いていたのに、やたらと人とぶつかるようになる」という設定を加えたのは、キャラクターの感情の流れを抜き取るという意識に基づいているんですね。

「そうですね。原作者が大切にしていることや、原作ファンが好きなシーンをどう抽出するか。そして、漫画じゃなくて映画だからこそできることについて考えていきます。それはやっぱり、漫画のコマとコマの間にある行間だったり、その感情の機微をどう捉えるかっていうことだと思うんです」

(取材・文:タナカシカ)

【作品情報】

眞栄田郷敦
高橋文哉 板垣李光人 桜田ひより
中島セナ 秋谷郁甫 兵頭功海 三浦誠己 やす(ずん)
石田ひかり 江口のりこ
薬師丸ひろ子
原作:山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督:萩原健太郎
脚本:吉田玲子
音楽:小島裕規 “Yaffle”
主題歌:WurtS「NOISE」(EMI Records / W’s Project)
製作:映画「ブルーピリオド」製作委員会
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:ワーナー・ブラザース映画 ©山口つばさ/講談社 ©2024映画「ブルーピリオド」製作委員会
公式HP
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公式instagram
#映画ブルーピリオド

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