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僕の中にずっと小さな『箱男』が住んでいた

俳優の永瀬正敏。写真:Wakaco、ヘアメイク:勇見 勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト:渡辺康裕
俳優の永瀬正敏。写真:Wakaco、ヘアメイク:勇見 勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト:渡辺康裕

―――今回、どういう経緯で本作の出演のお話があったのでしょうか?

「撮影中止にはなりましたが、石井監督は『箱男』を諦めていませんでした。監督は会うたびに『まだ諦めていない』とおっしゃっていましたし、実際に何度も映画化に向けて行動を起こしていらっしゃったんです。それを知っていたので、27年間、僕の中には小さな『箱男』がずっと住んでいました。そして今回、やっと GOサインが出たと聞いて、感慨深いというか、石井監督の諦めない強さを感じました」

―――ただ最初に映画化の話が出てから27年も経っているので、時代も変わり、生活環境もかなり変化していますよね。脚本も大きく変わったのではないでしょうか。

「実は27年前の『箱男』の脚本は、安部公房さんの『娯楽にしてくれ』という希望を石井監督が脚本に盛り込んだので、本作より娯楽性が強い脚本だったんです。でも今回の『箱男』の脚本は原作寄りで、時代がやっと安部公房さんの世界に追いついたのだと思います。安部さんはこういう時代になることがわかっていたのかもしれない。そこが安部公房さんの凄いところですね」

―――具体的にはどういうところが時代に追いついたのでしょうか?

「この映画が原作の時代のまま映画化される場合、街の景色は違いますし、スマホも出てきませんが、原作で予言されていた世界観の方が現代の世界に近いのです。

今のSNS時代を象徴する“匿名性の自由と恐怖”についても映画『箱男』に描かれています。小さな世界の中で得る自由、不自由、恐怖、恍惚感はまさに今の時代ですから、作られるべき映画だったのだと思います。スマートフォンやPCが、ある意味箱男の箱ではないかと」

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