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野木作品最大の特徴

綾野剛(2016年)
綾野剛【Getty Images】

 そして、野木が脚本を手がけた作品の最大の特徴は躍動感あふれるキャラクター描写だ。

 例えば、『アンナチュラル』で描かれるUDIラボには、一家心中に巻き込まれた幼少期の経験から並々ならぬ思いで不条理な死と戦うミコトはもちろん、そんなミコトの良きパートナーであり、明るい性格でラボを照らす臨床検査技師の東海林(市川実日子)、医者一家に生まれるもラボで将来を模索中、そしてミコトを密かに思う姿も愛おしい六郎(窪田正孝)、いつも自由奔放なラボメンバーに振り回されているが、いざという時は頼もしい行動に出る所長の神倉(松重豊)ら、個性豊かな面々が揃っている。

 義理の母親としてミコトを温かく見守る弁護士の夏代(薬師丸ひろ子)、紳士的でいつも微笑みを浮かべているが、どこか怪しげな葬儀社の木林(竜星涼)、普段は愚痴や文句を吐きながらも情熱的な一面を持ち合わせる刑事の毛利(大倉孝二)など、周りの登場人物も一人として欠かせない重要な存在であり、演じる役者も豪華。

 特に、このドラマでは井浦新演じるミコトと同じく法医解剖医の中堂が視聴者の人気を集めた。ぶっきらぼうで「クソが!!」とすぐに暴言を吐くため、仕事でコンビを組む臨床検査技師の坂本(飯尾和樹)からパワハラであわや訴えられそうになる中堂。一方で、亡くなった恋人を一途に思い続け、その死の真相を追う愛情深さもある、そのギャップを見事に体現した井浦に多くの人が心を鷲掴みにされた。

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