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「とにかく仲間が欲しかった」
一度頓挫したプロジェクトが再び動き出したワケ

写真:浜瀬将樹

写真:浜瀬将樹

―――90年代に実際に安部さんとお会いになって映画化の許可を得たというお話は、すでに様々な場所でお話になっているので省略させていただきます。97年に、クランクイン直前で映画『箱男』の企画が頓挫して、今から10年ほど前に再び脚本と向き合い始めたということですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

「今回の映画はコギトワークスの制作で、脚本はコギトに所属するいながききよたかさんと共作なんですけども、最初に組んだのがWOWOWの『ネオ・ウルトラQ』シリーズ(2013)でした。いながきさんが脚本、コギトワークスの関さんがプロデューサー、私が監督という座組で3本のエピソードを作ったのですが、とても面白かったんですね。その流れで関さんといながきさんとだったら、一緒に『箱男』をやれるかもしれないと思ったんです。それまではずっと1人でやっていて、うまくいかなかった。とにかく仲間が欲しかったんです」

―――今回の映画の脚本づくりは、元の脚本をリライトする形で進められたのでしょうか?

「前のやつは捨てて、ゼロから作りました。ちなみに以前の脚本は制作が中止になって以来、一度も見ていません。ただゼロから作り直したとはいえ、私の中にイメージはありましたし、きわめて緻密に原作を分析してくれるいながきさんの力によって、新しく脚本を立ち上げることができました」

―――本作では、随所で原作の要素を大胆にアレンジしておられます。たとえば小説終盤の「Dの場合」という少年のエピソードを思い切ってカットされていますね。とはいえ、「Dの場合」は、物語の本筋から離れた異質なエピソードです。

「そこは物凄く悩んだ部分です。実は最初の脚本では「Dの場合」はなく「ショパンの下り」は克明に書いてありました。さらに言うと、小説で描かれている詩的なイメージも最初の稿ではかなり入っていました。そういう本筋から外れたエピソードも本当は入れたかったんですよ。とはいえ、全てを入れるわけにいかないので、切りました」

―――今回の映画は、逸脱的なエピソードをカットすることによって、見る/見られる関係性、語り/語られる関係性が絡み合う様子や、それに伴う主体の消失といった原作のテーマがより凝縮した形で描かれていると思いました。

「今回の脚本は、主要な登場人物を決めて全体の構造を固める、それに合わせて残せるエピソードは残す、という方法論で作っていきました。具体的には、ラブストーリー、軍医の箱男利用の完全犯罪、箱男対偽箱男の戦いを中心に据えて、そこから外れるものに関しては、私たちが好きな部分であっても思い切ってカットする」

―――いながきさんという他者と脚本づくりを進めたことによって、思い切った判断ができたのかもしれませんね。

「そうですね。どちらか言うと私は感性の赴くままに暴走するタイプなので。構造をしっかり支えてくれる人がいると大変走りやすいですね(笑)」

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