現場での役作り、キャラクターとの違いとはー。
―――田中さんは、脚本をお読みになった際、どう感じましたか?
田中爽一郎(以下、田中)「秋葉が前に書いた短編映画の脚本とまったく違っていたことと、実体験を使ったというところに驚きました。それに、いつもの秋葉と暖というキャラクターがかけ離れているので、『自分の知らない秋葉がいる』と、何度も驚きがありました」
秋葉「確かに。確かに」
田中「でも、先程の秋葉が言ったような、『少年っぽい』という感じは自分ではわからないですね(笑)。ただ、壮介の人との距離の測り方や、寄り添い方は自分と似ている気がして、『自分が壮介を演じたい』と思いました」
―――壮介というキャラクターに共通点を感じたのでしょうか?
田中「そうですね。ただ撮影初日の段取りで実際に演じてみると、自分が思っていた壮介はもっとフラットな人間像だったのですが、秋葉が演じる暖が想定よりも不機嫌で、何かに怒っていて、陰の引力を持っていたので、このままだと引っ張られ過ぎてしまうかもしれないという懸念がありました。ただ、気持ちの面ではそこまで違いはないので、秋葉と2人でバランスを調節してそこは乗り越えていきました」
ーーーそのバランスを調節するうえで、どのような会話があったのでしょうか?
田中「でも、秋葉が指摘してくれた気がする」
秋葉「さっきも言ったように、私の中で、壮介は陰のキャラクターにするより、陽があるからこそ、陰が際立つキャラクターにしたかったんです。暖のそばにいることで、説得力のある人物であってほしいと思っていたので、具体的に『こう演じてほしい』と感情を求めるよりも、その時の状況を汲み取って、身体の状態を演出することで爽ちゃん自身が生み出してくれるものを撮りたいという話はしましたね。なので、基本的に『もっと明るく』といった、直接的な言葉を使わないようにしていました」