食べる×ロードムービーのアイデア誕生秘話
―――本作は、”食べる×ロードムービー”というユニークなコンセプトでしたが、思いついたきっかけを教えてください。
秋葉「最初はロードムービーのイメージはありませんでした。ただ、実際に撮影する場所に行く際に車で移動していたので、結果的にロケハン自体がロードムービーみたいになっていたんです。そこで、『こういう風景で撮りたい』というアイデアがリンクし、あとは、父が実際に遺していた『食べたいものリスト』を辿るような構成を考えていて、実際に父が言っていたお店や場所を使いたかったので、場所と食べ物を掛け合わせる形になりました」
―――作品を観ながら、私も何度もラーメンが食べたくなりました。個人的に、カレーうどんを食べるシーンで、お2人が白い洋服を着ていたのが印象的でした。こちらは狙っていたのでしょうか?
田中「確かに白でした! あれって現場で買ったんだっけ?」
秋葉「確か、銭湯の後だったから、『部屋着っぽいラフなTシャツを買おう』ってなって買ったんだよ。あの服、確かに白だったね(笑)。でも、カレーうどんだから白Tにしようとという狙いはありませんでした。でも確かに、食べ物が飛んで染みつくみたいなシーンをあっても面白かったかもしれませんね!」
―――海辺で、暖と壮介が泊まっていたペンションのシーンについてですが、オートロックなのに何も考えずに締め出される描写が何度もありました。自分が忘れ物を取りに行くのではなく、『それ取って来てください』と言って、と他の人に頼むことで、さらに締め出される人が増えていく様子が描かれています。コメディシーンではないのに、締め出される描写の度に思わず笑ってしまいました。
秋葉「ありがとうございます! 私、もともとゲストハウスが好きなんですよ。ゲストハウスって、チェックイン時間の後はオートロックに切り替わるところが多く、外にタバコを吸いに行ったまま締め出されてしまって、中の人が開けてくれる、ということが、本当によくあるんですよ。そこで人との関わりが生まれることが多くて(笑)。オートロックという仕掛けによって『接点のなかった人たちが交流する』というシーンを描きたかったんです」
―――すごく面白かったです。最後も壮介が締め出されていました(笑)
田中「しかもすごい風の中で(笑)」
秋葉「全体的なバランスも考えていて、壮介によって閉め出されたゲストハウスのお客さんのカットは間を取るか、すぐ次のカットに切り替えるかで悩みましたが、結果的にあまり引っ張らず、すぐ次のカットに切り替えましたね」