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「大事なのは普通の人として生きること」映画『シサㇺ』主演・寛一郎インタビュー。役者業や父・佐藤浩市について語る

text by 福田桃奈

江戸時代前期の北海道南西部に位置する松前藩と、アイヌとの歴史を描いたスペクタクル映画『シサㇺ』が9月13日(金)より全国公開される。本作で主演を務めた寛一郎さんにインタビューを敢行。撮影の裏話や寛一郎さんの生き方、父・佐藤浩市さんについてお話を伺った。(取材・文:福田桃奈)

「文化を映画というエンターテイメントとして残したい」
本作にかける想い

写真:武馬玲子 ヘア(メイク):AMANO(フリー) スタイリスト:坂上真一(白山事務所)

写真:武馬玲子 ヘア(メイク):AMANO(フリー) スタイリスト:坂上真一(白山事務所)

―――寛一郎さんは、松前藩士の子として生きてきた主人公・孝二郎を演じられています。まず脚本を読んだ時の感想を教えてください。

「アイヌという文化を描きたいということを事前に知った上で脚本を読んだので、人間関係や心情含め、とても素晴らしい塩梅だと思いました。その中で説得力の深さを出すのは、僕たち役者の仕事になるので責任を感じました。

僕は、失われてしまいそうな文化を映画というエンターテイメントとして残せたら素敵だなという思いが常にあって、特に孝二郎の最終的な判断は凄く意味のあることだと思いますし、素晴らしいと思いました」

―――寛一郎さんの覚悟と演じられた孝二郎の覚悟とが重なり、とても力強くこちらに伝わってきました。和人でありながら、アイヌの文化に触れたことで、自分の目で見たものを信じ、己の正義へと向かっていく姿は、寛一郎さんご自身の持つしなやかさと、力強さが合わさり、とても真実味を持って感じられました。演じる上でどんなことを意識されましたか?

「最近は時代劇をやらせていただくことが増えてきたんですけど、そこで学んだことは、その時代に生きていた人の価値観と、今日を生きる人の価値観とをリンクさせることです。

孝二郎が兄の敵を打つために覚悟を持って武士になっていく話でもありますが、アイヌという多様性のある人たちと触れ合うことで変わっていく。なので、僕はいいストーリーテラーになれればいいなと思いました」

―――細さを残しながら程よく筋肉が付いているところが、新米の武士というリアリティを出していると思いました。肉体作りはされましたか?

「1ヶ月くらいホテルに滞在するということで、ロケ地の北海道白糠町(しらぬかちょう)に着いた時にネットで筋トレ用のベンチとダンベルを購入しました。当時の人たちは細かったと思いますが、刀を扱ったりして筋肉質だったと思うので、坂東龍汰くん含めた若い共演者たちでみんなで、僕の部屋で筋トレをしました」

―――アイヌの人たちに助けられる一連のシーンでの孝二郎の居方が、とてもナチュラルにフラットにその場にいるように見えました。孝二郎が新しい文化に触れ合う場面だったと思いますが、どんなことを意識されましたか?

「武士や侍の人たちは、敵に助けてもらうようなことがあれば自死を選ぶと思うんです。でも孝二郎は半人前なところがあって、自分が死ぬかもしれないという窮地のところでは、アイヌに反抗してはいられない。

そこに甘んじるという言葉は適切ではないかもしれないですけど、当初の孝二郎の認識としては、アイヌの人たちは敵に近い存在だったわけで、その人たちに助けられるというのは、複雑な心境であったと思うんです」

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