俳優としての覚悟と未来
―――本作は、5人の夫たちがスオミにいいように振り回されているのが滑稽で可愛いとさえ思ってしまうのですが、戸塚さんは、スオミの夫たちみたいに女性に振り回される気持ち、共感できますか?
「わかりますよ(笑)。スオミは突然、夫の前から姿を消しますが、僕はかつて、お付き合いしていた方から突然別れ話を切り出されて呆然とした経験があります。
別れの予兆みたいなのは全然なかったし、嫌われるようなことをした覚えもなく、一緒に楽しくおしゃべりしながらご飯を食べていたときに、急に『別れよう』と言われて『ちょっと待って、どうして? 本気? 冗談?』みたいな(笑)。そのとき、女性はみんな男の知らないところで抱えているものがあるんだなと学びました」
―――なるほど。スオミもそうだったのかもしれません。
「男性は、スオミに振り回される気持ちがわかるんじゃないかと思います。でもスオミも5人と結婚していたけど、それぞれの夫に合わせて自分を変えていたのは、その人が喜ぶことをしたい気持ちもあったと思う。それもまた愛じゃないですか。そういう人間的な深い部分も描いている作品だと思います」
―――『スオミの話をしよう』以外にも今年は、荻上直子監督作『まる』などにも出演されて、話題作が続きますがご自身のキャリアが波に乗ってきたという感触はありませんか?
「30歳を過ぎてから、やりがいのある役を多くいただけるようになったと感じてはいます。ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系、2023)で演じたオードリーの春日さんの役も大きかったです。
これまでもいろいろな作品に出演してきたんですが、気づかれていないことが多く『なんか観たことのある俳優』というポジションだったんです。でも最近、サウナへ行ったら、隣にいた人たちが、僕が出演したドラマの話をしていたので『戸塚純貴が広まってきている!』と思ってうれしかったです。今までやってきたことが報われる思いでした」
―――戸塚さんはたくさんの資格を持っていらっしゃるから、それらも役に活かせば、いろいろな役ができそうですね。
「あれは高校卒業後に、地元で車の整備士になろうと思って取得した資格なんですよ。『仮面ライダー ウィザード』のオーディションの時、大型バイクの免許を持っていたので、これは有利だ!と思ったけど『全然関係ないよ、就職試験じゃないんだから』と言われました。
正直、自分はこの仕事を死ぬまでやろうとあまり思っていないんです。いま楽しいから続けているけど、飽き性なので楽しくなかったら続けていられないと思います。でも、どんどん芝居が楽しくなっているので辞めるタイミングが見つからない(笑)」
―――辞めるタイミングが永遠に見つからないことを願います! 俳優の仕事が楽しいというのは、どういうところでしょうか?
「やはり自分ではない誰かになれる瞬間というのは、何も変えられない快感がありますね。誰かの人生を疑似体験できるのですから、俳優業はやっぱり面白い仕事だと思います」
(取材・文:斎藤 香)
ヘアメイク:千葉良太
スタイリスト:鬼塚美代子
【作品情報】
『スオミの話をしよう』
2024年9月13日より全国ロードショー
脚本&監督: 三谷幸喜
出演:長澤まさみ
西島秀俊 松坂桃李 瀬戸康史 遠藤憲一 小林隆 坂東彌十郎
戸塚純貴 阿南健治 梶原善 宮澤エマ製作:フジテレビ 東宝
制作プロダクション:エピスコープ
配給:東宝
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
公式サイト
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