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長澤まさみの「ヘルシンキ」に泣いたワケ

©2024「スオミの話をしよう」製作委員会
©2024「スオミの話をしよう」製作委員会

 そして主演の長澤まさみ。三谷幸喜が長澤まさみを「今、日本で一番実力があり、輝いている女優」と豪語していたが、あの5変化(母親役を入れれば6変化)を観れば、その通りと頷いてしまう。

 コメディエンヌとしての実力はすでに『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)のダーコ、『真田丸』(NHK)のきり役で証明済みだが、今回は、彼女の持つストレートな強さが6割くらいに留まっているイメージ。そのぶん正体のわからなさ、着地感のない美しさが出て、その上に面白さを乗せていた。…ってかなりこれ、すごい複雑なことをやってのけているのではなかろうか、長澤まさみ!

 最後のミュージカルシーンも、ダンスは華やか、歌声も素晴らしい。ただ、だからこそ、なぜかスオミが一番求めているものは、これからも手に入りにくいだろうな、と思ってしまった。

 あの明るい、開放感たっぷりの「ヘールシンキ、ヘルシンキ!♪」に、寂しさを感じ、涙腺がツンと刺激されたのは不覚だった。

 観るときの体調や心の在り方によっても、感じることが大きく変わりそう。なるほど、この映画は、観終わってからも、静かに、こう言いたくなる作品だった。「もっと、スオミの話を聞こう」

【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。

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