「他者とのリズムになっていく」
編集時に発見したことについて
映画『ふれる』
ーー美咲はあらゆる物に触れていきますが、陶芸品を触る時に指で弾いて音を確かめたり、森にあるオブジェも音を鳴らして遊んでいます。触覚だけでなく、聴覚も確かめているように感じたのですが、何か意図はありましたか?
「陶芸の倉庫みたいなところに行った時に、唯ちゃんが陶芸品をコンコンと叩き出して、その時は『これは美咲がいつもやってることなんだな』以外は特に考えてなかったんですけど、撮影が進んでいく中で、僕からは何も言っていないのですが、学校の教室で美咲が陶芸をコンコンと叩いてるのを見て、担任の先生も一緒になって叩き始めて…。
編集の時に、これをどうにか生かせないかなと思った時に、最初は美咲自身のリズムだったのが、半径数十センチくらいかもしれないけど、他者とのリズムになっていくという変化を見せることができると気が付いたんです」
ーー『ふれる』というタイトルでありながらも、耳でも確かめるというところが凄くキーポイントになっていると思いました。編集の時に発見したことは他にもありましたか?
「企画の時は構成があったのですが、現場では目の前で起こっていることに意識を向けないと捉えきれなかったので、編集プランを捨てて撮影してたんです。でもいざ編集をしようとなった時に、『どうしよう…繋がらない』ってなりましたね(笑)。
美咲が同級生の陶芸を割ってから、周りの大人が気を遣ってアプローチしたりする芝居があったんですけど、編集時にカットしました。それはあのシーンで触れるということに対しての暴力性と、編集している側の暴力性が重なった瞬間でした。今回の編集作業で、シーンの頭をどこで始めてどう見せるかというのをやりながら学びました」