「登校するような感覚で毎日現場に行っていた」
撮影現場の雰囲気とリアクションの芝居について
―――冒頭のクラブのシーン、それに続く夜の教室で音楽を聴くシーンからは、その場にいる人全員が音楽に身を任せているのがリアルに伝わります。撮影現場もオーディションの雰囲気の延長線上にある、温かいものだったのでしょうか?
栗原「すっごく温かかったです。皆さんとても優しかったですし、僕たちが映画の現場に参加するのが初めてであることをわかった上で接してくださいました」
日高「スタッフのみなさんは『嫌なことや悩んでることがあったら共有してね』という風にずっと言ってくださいました。演技にも身が入りやすかったですし、本当に登校するような感覚で、毎日現場に行っていました」
―――撮影期間はどのくらいでしたか?
栗原「1カ月半くらいでした」
日高「僕らは初めての演技、初めての現場で、目に映るもの全部が新鮮でした。『カメラ大きい!』、『え、マイク、この距離で映り込まないの!』みたいな。ひたすら毎日楽しかったです」
栗原「どこから撮ってるの? っていうのはよく言っていましたね」
―――確かに本作はロングショットがすごく多いですよね。あとは、部室のシーンなど、美術の作り込みも徹底していると思いました。
栗原「部室は凄かった。本当に衝撃でした」
日高「いやもう、あれを作られたら、全部作りものじゃないかって、普段映画を観ていても信じられなくなりましたね」
―――栗原さん演じるユウタのトレードマークは何と言っても笑顔です。一方で、日高さん演じるコウは、目の前の出来事を真顔で見つめる姿が印象的です。物語が進むにつれて蜜月だった2人の関係には齟齬が生じるのですが、実は物語の最初から目の前の出来事に対する2人のリアクションにははっきりした差異が見受けられます。差異がしっかり描かれることによって、性格の異なるユウタとコウが共有する時間のかけがえのなさが際立つように思え、心を揺さぶられました。目の前の出来事に対するリアクションに関して、監督からディレクションはありましたか?
栗原「僕は本当にキャラクター的にも楽しいばっかりだったので、目の前で起きた出来事、例えば最初のクラブシーンでDJの音楽に身を委ねている時とか、ずっと笑顔でした。それに関して、監督から明確な指示はなかったと思います」
日高「僕が演じたコウはユウタとは幼馴染みで、ずっと一緒にバカやっていたけど、性格的には、ユウタほどおちゃらけているわけでもない。一緒にバカをやりつつも頭の片隅では家族のことも考えていて、どこかで常に不安を感じている。
コウのキャラクターに関してはあらかじめ監督から言い聞かせてもらっていましたし、自分自身にも近いものを感じていたので、リアクションも含めて、演技はやりやすかったですね」
―――2人のリアクションは、作為がなく、自然だからこそ胸を打つものになっていると思いました。
栗原「そうですね、音央さんはあくまで自然なリアクションを欲しがっていて。『想像の上でどれだけ自然でいられるか』っていうことをよくおっしゃっていました」
日高「音央さんは『こういう時は由起刀ならどうする?』、『颯人ならどうする?』と毎シーンのように声をかけてくださいました。それもあって、自然なリアクションを演技に直結させることができたと思っています」