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社会問題に鋭く切り込んだ『ラストマイル』

岡田将生
梨本孔役の岡田将生【Getty Images】

『ラストマイル』は、アメリカに本社を置く大手インターネットショッピングサイトの物流問題をテーマにしたサスペンス・スリラー。ブラックフライデー(流通業界最大の売り上げが見込める11月の感謝祭の翌日の金曜日)に倉庫から発送された商品が消費者のもとで爆発するという連続爆破事件を描いている。

 ここまで書けば誰でもピンとくるだろう。『ラストマイル』は、ネットショップ大手Amazon.comと流通業者との関係や、顧客に商品を届ける物流能力が不足する「2024年問題」をテーマにしているのだ。

 インターネットサイトで商品を「ポチった(購入した)」あと、何が起こっているのかを詳細に理解しているカスタマーは少ないはずだ。だから、当然、「2024問題」を正しく把握し、自分ごととして捉えているカスタマーも少ないだろう。

 昨年、「2024年問題」がメディアで多く取り上げられた際、消費者の元に商品が届きにくくなるといった「BtoC(企業・カスタマー間取引)」にフォーカスした伝えられ方が目立った。しかし、実のところ、「BtoB(企業間取引)」を理解していなければ「2024年問題」は正しく理解できない。

 本作では、画面上で商品を購入するとどのように注文が届き、倉庫で働く人がどのように動き、パッケージングされた後にどのように物流に乗るのか。玄関先で荷物を受け取るまでの工程、そこで発生する人々のドラマが生々しく映し出されている。

 だが、「『2024年問題』にするどく切り込んだ社会派ドラマ」という売り込み方では残念ながら一部の人にしか訴求できないだろう。そこで、効果を発揮したのが「シェアード・ユニバース」だ。

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