細野晴臣の音楽哲学が凝縮したサウンドトラック
本作の音楽を担当するのは、細野晴臣。言わずと知れた、日本のポップミュージック界の大御所である。本作に細野が寄せたスコアは、いたってシンプル。大仰なオーケストラの音などは一切なく、ピアノやアコースティックギター、マンドリンをはじめとするパーカッションに電子音楽を加えた曲が4トラックに収められ、あくまで彼らの生活に寄り添うような音楽を奏でている。
例えば序盤、ゴミを捨てた治が、そのまま工事現場へと出勤するシーンで流れる曲は、電車の通過音やラジオ体操の曲と調和し、まるで作中で実際に流れているかのようである。
かといって、音楽が印象に残らないというわけではない。例えば、祥太とりんが河川敷を歩きながら小学生とすれ違うシーンで流れるアコースティックギターの曲は、二人の哀愁をしっかり感じさせるものに仕上がっている。
最も印象的なのは、家族が揃って海水浴に出かけるシーンで流れる楽曲。アコースティックギターとピアノで奏でられるシンプルかつ洗練された楽曲だが、穏やかな曲調で家族の楽しいひとときを演出している。
極限まで削ぎ落としたミニマルな音数でドラマを際立たせるー。細野の音楽哲学が凝縮したサウンドトラックである。
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