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実際のゲストハウスの日常から得た演出

©2023 BPPS Inc.
©︎2023 BPPS Inc.

―――撮影中も宿泊していたとのことですが、脚本を作る際もtoco.に宿泊されましたか?

「企画開発中、僕は何度もこのゲストハウスに泊まりに来ていました。ゲストハウスでは、1日を通して働いているヘルパーさんたちがどのような生活を送っているのか、その空気感が自然と感じ取れるんです。

劇中では詩子(山本奈衣瑠)や博文(結城貴史)が登場しますが、詩子がWi-Fiのパスワードをお客さんに渡すときの仕草や、傷ついたシャオルー(生越千晴)が戻ってきた時に『お肉料理にします』と言いながら泉(吉行和子)が窓を拭いている場面など、そういった動きのひとつひとつが、匂いとして感じ取れるんです。

当時ここで館長をされていた方にも、お客様への対応や『ここはこう使ってくださいね』といった説明の仕方を実際に見せていただき、詩子役の奈衣瑠さんや、存役の(三河悠冴)さんにも体験してもらって、『こういう風に演じていこう』と方向性を固めていった、という背景があります」

―――「匂いとして感じる」という表現、とても素敵ですね。脚本を書く前にこちらを訪れたとのことですが、実際に訪れてみて、脚本に変化など生まれましたか?

「ありましたね。カウンターの使い方がまさにそうでした。ここは劇中ではレセプションとして機能していますが、実際にはバーカウンターとして使われている場所なんです」

―――劇中では、詩子が田舎からやってきたときに、カウンターでやり取りをするシーンがありました。

「そうですね。キッチンの使い方やゲストハウス内のハウスルールが脚本に反映されている部分は大きいですね。例えば、冷蔵庫の使い方も独自のルールがあり、よく見ると冷蔵庫に詩子が描いたイラストが貼られているんです。こういったディテールも、現地の雰囲気を脚本に活かした結果として取り入れられています」

―――こささ監督はバックパッカーの経験があると伺いました。本作に登場するキャラクターは、かつて監督が旅で出会った実在の人物をモデルにしたところなどあるのでしょうか?

「いえ、特に実在の人物をモデルにしたわけではありません。結城さんが演じた博文と、三河さんが演じた存については、実は脚本を彼らに合わせて書いた、いわゆる宛て書きなんです」

―――その他のキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?

「最初は、記号的にキャラクターの構成から始めて、そこに肉付けしていきました。『こういう悩みを抱えているのは現代にも通じるよね』といった具合に、記号としてとらえていたものを1つずつ、本物の人間のように描いていきました」

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