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「人間の弱点を掬い上げて昇華してくれる」
巨匠・倉本聰について

菅野恵
写真:大島風穂

ーーー先ほど不安な気持ちと葛藤されていたと仰られていましたが、それを微塵も感じさせない程、堂々と演じられており素晴らしかったです。これまで倉本聰作品には多く携わられていますが、倉本聰さんはどんな方ですか?

「こんなこと言ったら怒られますけど、凄く優しいし可愛い方です(笑)。倉本先生ほど作品に対する熱量がある方に出会ったことがなかったので、その分怒るとめちゃくちゃ怖いんですけど、それ以外ではとても優しいですし、お話しも面白くお喋りな方です。ご自身も怖いと言われていることを気にされていて、『怖くないんだよ』と言ってるぐらいです(笑)」

ーーー演出面ではいかがですか?

「それは本当に厳しいですね。舞台に出るだけで、『ダメ!出方が違う!』とか、『セリフの間が違う!』と何度もダメ出しをされます。あとはその役がどういう街で育って、どういう暮らしをしてきたかを自分の中で実感を持てるようになるまで考えなさいと常に言われていました。でもそういったことを考えることで、役の奥行きや、その場にいることの絶対的な自信が付いてくるので、それを学ぶことが出来たのは役者としての財産だなと思っています」

ーーー倉本聰さんの脚本にはどんな魅力がありますか?

「登場人物が全員不器用なところですね。先生がよく『人間の弱点にこそ共感する。だからその弱点を描きたい』と仰ってるんですけど、人のダメな部分や目を背けたくなるようなことを描くことで共感できる作品になる。人間の弱点を掬い上げて昇華してくれるところが魅力だと思います。生きてていいんだなと思えるというのは大袈裟ですけど、励まされている方は沢山いる気がします。『北の国から』は最近になって観たんですけど、ボロボロ泣いてしまって…。これだけ人の心を揺さぶる作品を作る人って凄いなと改めて思いましたし、登場人物の生き様に励まされて、自分も頑張ろうと思えるんですよね」

ーーー菅野さんが普段ライフスタイルで大切にしていることはありますか?

「本当に必要なことなのかを考えることを意識しています。1日3食を食べる習慣であっても、お腹が空いてなければ食べる必要はないよねとか、流行ってるからその洋服を買うとか、そういうなんとなくに流されて決めるのは嫌だなと。もし世の中と違っていても、自分がより快適に過ごせる方を選択していきたいなと思っています」

ーーー最後に本作を観る方にメッセージをお願いします。

「分かり易い作品ではないとは思うんですけど、その分自分がどんなことに心惹かれるのかが感じやすいのではないかなと思います。若い人だからこそ響く部分もあると思いますし、何に心動かされたのかを考えながら楽しんでいただけたら嬉しいです」

(取材・文:福田桃奈)

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