物語を彩る6人のキャスト陣
実写映画向きな作品だと感じた理由のひとつが、スポットライトの当たる主要な登場人物が限られていること。エンドロールに出てくる出演者の名前の少なさからも見てとれる通り、物語を通してフィーチャーされるのはたったの6人だけ。
ただ、たった6人だったからこそ、映画の公開に向けてキャスト陣の団結感を大いに感じさせるイベントは盛りだくさんに用意されていた。大学との共同イベントや心理戦のゲームなど、作品設定とリンクする企画も多く、宣伝担当は大忙しな毎日だっただろう。
そして、映画公開前から仲の良い6人のキャスト陣の姿を見ていたことで、映画の序盤で信頼を深めていく就活生たちに彼らを重ねて、地続きに演じられた登場人物たちへと感情移入していく。
実際、異なる個性と長所をもった6人の就活生は、ベンチャー企業の最終面接に残るほどの煌びやかな人材であり、今をときめく若手俳優たちが演じることに違和感を感じない。
原作者である浅倉秋成は本作のインタビューで、「主人公・嶌衣織は浜辺美波さんのイメージ」と、単行本を敢行する際に編集者と話していたことを明かしているが、それがわかるほど、彼女の姿は小説を読んだときの嶌衣織(浜辺美波)のイメージに重なった。特に誰かが口論しているときに映りこむ1歩引いた佇まいは、嶌そのものだった。
さらに、ムードメーカーの袴田亮(西垣匠)や凛とした雰囲気の矢代つばさ(山下美月)、生真面目な森久保公彦(倉悠貴)は、物語が進むにつれて豹変する姿を見せるキャラクターたち。だからこそ、彼らのギャップがしっかりと表現されていたことで、密室の緊迫感はより一層増していく。
波多野祥吾(赤楚衛二)や九賀蒼太(佐野勇斗)が感情を剥き出しにする姿も含めて、たった6人だからこそ、それぞれが体現する表と裏の演技を濃密に体験できる映画となっている。