画角から浮かび上がる演出の意図
作品の演出を推しはかるうえで、特に印象的だったのは、最終面接の議題が宣告されたあと6人全員がファミレスに集まるシーンだ。それぞれ自己紹介をするなか、喋るキャラクターを除く5人の顔も画面上には映し出されている。まるで観客に対して、話を聞いている人物のなかで不自然な行動をしている人がいないかを見張らせるかのように。
このシーンのほかにも、複数の人物の顔が映りこむ画角で意図的に撮られているカットが多く、誰かが喋っているときの表情や目の動きまで、キャスト陣の演技が作り込まれていることがわかる。
さらに、物語が進んでいくにつれて改変点はいくつかあったものの、原作キャラの人格を軽んずるものはなかったように感じた。「あのキャラクターがあんな行動をするわけがない」と思わせないことは、原作の実写化において至上命題ともいえるが、この作品においてはそのような瞬間は見受けられない。ただ、小説では映画で描かれた以上に細やかな伏線が張り巡らされており、本編の合間に登場人物のインタビューを挟み込むなど珍しい構成が成されている。
登場人物たちの詳細なバックグラウンドや「スピラリンクス」人事部の意図など、映画では明かされなかった部分まで就職活動に関わる人々の思考が赤裸々に綴られているので、まんまと騙された人は、ぜひ原作にも目を通してほしい。