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石井監督が「今やらないとダメだ」と書き上げたストーリー

「愛にイナズマ」
©2023愛にイナズマ製作委員会

前述したように、石井監督は、本作の脚本を2週間で書き上げたという。それから2ヶ月後にはクランクインするという、驚異的なスピードで制作が進んだ。

石井監督が「今やらないとダメだ」という圧倒的な熱量を持って書き上げた物語は、映画監督を志す花子を中心に展開していく。

考察に入る前に、本作のストーリーを整理しておこう。

映画監督を志す折村花⼦(松岡茉優)は、自身の家族を題材にした映画でデビューする目前だった。

ある日、飛び降り自殺しそうな人を見守る群衆が、心ないヤジを飛ばしている現場に居合わせた花子。その出来事を脚本の中に組み込むと、プロデューサーの原(MEGUMI)と助監督の荒川(三浦貴大)に「こんなことあり得ない」と一蹴され、「もっと人を観察しろ」といまいち的を得ないアドバイスを受ける。

特に助監督の荒川は、業界の常識を一方的に押し付け、セクハラまがいな言動をとるが、それでも花子は、自分の感情を押し殺して耐えていた。

そんな時にふと立ち寄ったバーで花子は、人の喧嘩の仲裁に入って殴られていた正夫(窪田正孝)と偶然出会う。突発的に話しかけてしまった花子だったが、意気投合した2人はお互いに惹かれ合う展開に。

その後、映画製作に向けてプロデューサーの原と助監督の荒川と共にロケハンをしていた花子だったが、ここでも荒川は、花子の進め方にケチをつけては責め立てるのであった。

そして製作途中だった花子の物語は、卑劣で無責任なプロデューサーに騙されてそっくりそのまま盗用されてしまう。ギャラももらえず、大切に温めてきた企画も奪われた花子は絶望していた。

そんな時、正夫の問いが花子を奮い立たせた。

「花⼦さんは、どうするんですか?映画諦めるんですか?」
「舐められたままで終われるか!負けませんよ、私は」

反撃を決意した花子は、10年以上音信不通の家族の元へと帰ることに。

妻に愛想を尽かされた⽗・治(佐藤浩市)、⼝だけがうまい⻑男・誠⼀(池松壮亮)、真⾯⽬ゆえにストレスを溜め込む次男・雄⼆(若葉⻯也)にカメラを向け、自分にしか撮れない映画で世の中を見返そうとするが、花子がやろうとしていることを理解できない家族は戸惑うばかりで、中々上手くいかない。

イライラして家族を「クソだ」「面白くない」と罵る花子。これを皮切りに、徐々に激しい家族喧嘩に発展するものの、消えた母の話をきっかけに、家族のメンバーは少しずつ本音を見せ始める。

修復不可能に思えたイビツな家族の物語は、思いもよらない⽅向に進んでいく。そして、“ある秘密”にまつわるエピソードがとてつもない感動を映画に呼び込む…。

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