ポイント③意図的なホラー要素の排除
そして最後。意図的なホラー要素の排除だ。前作で活躍したマキタスポーツ演じる探偵が再登場し、唯一『ミンナのウタ』との接点になる場面がある。この場面、マキタスポーツ自身がコメディリリーフであるためか、シリアスだった映画が唐突にコメディ映画になってしまう。
明らかに緩急をつけるための演出だが、どうも度を超しているようにみえる。この脱力のおかけで『あのコはだぁれ?』の怖さが際立っていく。
怖さの面でも笑いギリギリのラインを狙っているように思える部分が多々ある。UFOキャッチャーの中に“さな”が入っている場面は「よく思いついたなあ」と感心する一方、いやいやおかしいだろ…と思ってしまう。
アイデアが具現化するまで短期間であったため『あのコはだぁれ?』はシリアスにかつ緩急がしっかりついた勢いのある作品になった。清水監督自身、「監督人生において、こんな短期間で仕上げた作品は初めて」と語っている。その集中力に感服だ。もちろん、ホラー担当の川松尚良、特殊造形の百武朋の協力も忘れてはならない。
今回、役者陣も若手で固めているのも功を奏し、なんとも言えない親近感がある。主演の渋谷凪咲は、若手キャストに寄り添う立ち位置として、かなり難しい役柄をこなしている。
そして、さなの母親、詩織役を演じた山川真里果。前作では強いインパクトを残した俳優だが、今回はインパクトだけでなく、重要な役割を担っている。『あのコはだぁれ?』は、こういった友人や家族をしっかり描くことで、『ミンナのウタ』をよりエンターテインメント化することに成功しているのだ。
さて、『あのコはだぁれ?』で“さな”の“最後の声”コレクションは終わったのだろうか? きっと、清水監督の自分でも抗えないホラー脳は、次を考えているに違いない。
(文・ナマニク)
【作品概要】
■出演:渋谷凪咲 早瀬憩 山時聡真 荒木飛羽 今森茉耶 蒼井旬 穂紫朋子
今井あずさ 小原正子 伊藤麻実子 たくませいこ 山川真里果
松尾諭 マキタスポーツ / 染谷将太
■監督:清水崇
■原案・脚本:角田ルミ 清水崇
■製作:「あのコはだぁれ?」製作委員会
■企画配給:松竹
■制作プロダクション:ブースタープロジェクト “PEEK A BOO films”
■制作協力:松竹撮影所 松竹映像センター
©2024「あのコはだぁれ?」製作委員
公式サイト
公式X