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主演・眞栄田郷敦による“目の演技”

©山口つばさ/講談社 ©2024映画「ブルーピリオド」製作委員会

©山口つばさ/講談社 ©2024映画「ブルーピリオド」製作委員会

 本作で最も印象的だったのは、漫画から実写へのキャラクターの落とし込みだ。プロダクションノートによるとスタッフ陣は原作者である山口の「無理に原作に寄せようとするよりも、実在する人物としてのリアリティを大切にしてください」という言葉を受け、「コスプレにしないこと」を大原則に制作を進めていったとのこと。そのため、衣装やヘアメイクは現実にいても違和感がなく、かつ原作ファンを裏切らないものとなっている。

 あとは各キャストの演技力に託されており、これがすごかった。主役から脇役に至るまで、どのキャラクターも「演じられるのはこの人にしかいなかった」と万人に思わせるほどに忠実だ。本作では絵を描く手元やシーンに吹き替えを一切使用しておらず、キャスト陣は絵画指導を担当した海老澤功の下で何ヶ月も絵の練習に励んでいる。

 中でも八虎を演じる眞栄田はクランクインの約半年前から絵の練習をスタートさせ、海老澤が「この調子で頑張れば、本当に藝大に受かるんじゃないか」と絶賛するほどの上達を見せた。劇中でも“勝利”をテーマにした眞栄田の作品が使用されているが、その力強さに圧倒された。

 加えて注目すべきは、眞栄田の“目の演技”だ。眞栄田といえば、2022年に社会現象を巻き起こしたドラマ『エルピス』(カンテレ・フジテレビ系)での好演が記憶に新しい。本当の自分をごまかしながら生きていたテレビ局の若手ディレクター・岸本拓朗が冤罪事件の真相を追う過程で自身の人生とも向き合い始めていく姿を、迫真の演技で見せた。

 その時もそうだったが、眞栄田は目力がとんでもなく強い。それは単に大きくて印象的ということではなく、目の表現力が豊かで心に訴えかけてくるものがある、ということだ。本作でも、時には八虎が抱える空虚感を、ある時には驚異の集中力を、またある時には焦りを とキャンパスのように様々な色を目に映し出す。息をするのも忘れるくらい、眞栄田の目に吸い込まれそうな瞬間が多々あった。

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