喜多ちゃんファンこそ見るべし!
劇場総集編の魅力
劇場総集編は、そんなアニメシリーズ全12話を前・後編に再構築した内容となっている。映画のチケットは2,000円が主流となりつつある昨今、同じ内容ならわざわざ観に行かなくても…と鑑賞を躊躇っている人もいるだろう。
しかし、まずは断言したい。今回の総集編は2,000円、いやそれ以上の価値がある。中でも後編は、結束バンドのギター&ボーカル“喜多ちゃん”こと喜多郁代(長谷川育美)のファンにとっては見逃せない内容となっている。なぜなら本作は、彼女の成長物語でもあるからだ。
まず大前提として、ぼっちと喜多ちゃんは対照的なキャラクターとして描かれている。2人は同じ学校の同級生だが、対人関係が苦手で学校ではいつも1人のぼっちに対し、コミュ力おばけでいつもみんなに囲まれている喜多ちゃん。休みの日は常に友達と遊ぶ約束で詰まっているし、フォトジェニックなものに目がない。
一方で、彼女にはクールで実は変人なベーシスト・山田リョウ(水野朔)に憧れ、ギターが弾けると嘘をついて結束バンドに加入するも、初ライブを前に逃亡した過去がある。その後、ぼっちとの出会いをきっかけに虹夏やリョウと再会。事情を説明して、バンドに再加入を果たした。
つまり、一見誰もが憧れるキラキラ女子だけど、見栄っ張りだったり好きな人には盲目的だったり、実は完璧じゃない。本人も別に自信があるわけじゃなく自分だけ初心者でメンバーに迷惑をかけているという負い目もある。
そんな喜多ちゃんの転機となったのが、4人での初ライブだ。不安や緊張も相まって演奏がバラバラになってしまい、挫折を味わう喜多ちゃんとは対照的にぼっちは覚醒し、圧巻のギタープレイを披露する。この時、喜多ちゃんはのちに語るように、自分にはぼっちみたいな人を惹きつけられるような演奏はできないと感じた。