圧巻の文化祭のステージ
では、どうするか。本作では初ライブでの挫折から、文化祭ライブで機材トラブルに見舞われたぼっちをアドリブでフォローするまでの間に、新規カットが追加されている。そこでは喜多ちゃんがぐっと成長した理由が描かれ、より文化祭ライブが感動的なものになった。
自分にないものを持つお互いに憧れ、正反対ながらも歩み寄っていくぼっちと喜多ちゃん。そんな2人の関係性を表すようなぼっち作詞の楽曲「星座になれたら」を、結束バンドが文化祭のステージで披露するシーンは圧巻の一言だ。
演奏中、ギターのチューニングに異変を感じたぼっち。しまいには1弦が切れ、2弦もペグが壊れてギターが使い物にならなくなってしまう。そんな中、ギターソロに突入し、焦るぼっちをフォローしたのが前述したように喜多ちゃん。彼女のアドリブに助けられたぼっちは咄嗟に、廣井きくりが呑んでいたワンカップ酒の瓶を使ったボトルネック奏法を披露し、ライブを見事成功させる。
映画館の音響で聴く結束バンドの演奏は、まるでその場に居合わせたような臨場感があった。演奏はもちろんだが、より感動したのは終わった後。体育館に響く観客の歓声がひととき消え、ぼっちの息遣いが耳に迫る。自宅で観ている時よりも鮮明になったその音が、達成感と疲労と安心とでいっぱいなぼっちの胸の内を際立て、思わず涙が溢れた。アニメを視聴した人も、ぜひ今一度この感動を映画館で噛み締めてほしい。