舞台となった街のリアリティ
では、本作の現代性はどこにあるのか。
現在の街並みや風俗を映した背景描写、作品に描かれた風景が、この作品の新しさを担保しているように思う。
今回の舞台は、新宿を越えて、お台場、川崎周辺、海ほたるなどへと移っていく。川崎に向かう途中、首都高とモノレールの間隔が狭くなっている空間を活かし、その間を行き来するカーチェイスとアクションは本作の見せ場の一つだろう。
そうした派手な場面以上に驚かされたのは、街ごとの背景のリアリティだ。前作と同様、今作でも新宿の街並みは非常に細かく書き込まれている。
クロス新宿ビジョンの3D巨大猫や新宿東宝ビルのゴジラヘッドといったわかりやすいものだけでなく、ちょっとした通り道など、見覚えのある景色が広がり、実際に新宿を歩いているかのようだ。
お台場では、実物大ガンダムなどの巨大なオブジェのみならず、ベンチの少し汚れた感じも含めたデッキ部分の細かな描写が特に素晴らしく、ついそこに行きたくなってしまう。
新海誠作品や京都アニメーション作品のような、現実を超える美しさの背景描写とは異なるが、そうしたリアリティのある背景に唸らされた。本作を観るまで、聖地巡礼的な欲求を刺激されるとは思わなかった。