3.ちーちゃんの目的
ちーちゃんの目的は、「萌花と一緒に家で暮らすこと」である。友達とも言える存在である萌花と一緒に暮らすことで、新たな楽しみを感じたかったのだろう。
しかしそのためには、2人の邪魔者となる萌花の家族を殺し、家を奪い取る必要がある。ちーちゃんは萌花の父親を殺した後、次は萌花の義理の母親である萩乃を殺そうとしたが、萩乃の「自由に生きていいんだよ」という言葉で正気に戻った萌花に阻止され、ちーちゃんの目的は失敗に終わってしまう。
そしてちーちゃんは、萌花の前から姿を消してしまうのである。
このシーンは、ちーちゃんと萌花の決別、そして友情の終わりを表現している。なぜそこまでして、ちーちゃんは萌花と一緒に暮らしたかったのか? おそらくちーちゃんは、「単純に友達が欲しかった」のだと考えられる。
原作漫画『ちーちゃん』にも、ちーちゃんの幼馴染である優愛という少女が登場しており、ちーちゃんが優愛と友達になろうとして、歩み寄るシーンがあった。
そのため、ちーちゃんは心の底では自分を理解してくれる友達を欲しており、萌花と友達になりたかったのだろう。しかし2人が最終的に歩み寄ることはなく、ちーちゃんは元の「毒娘」に戻り、再び家に住む人々を不幸にしているのである。
本作はホラー映画でありながらも、家族の在り方や友情について描いたヒューマンドラマでもある。特にちーちゃんと萌花の奇妙な友情に違和感を感じながらも、思わず涙してしまう人もいるのではないだろうか。
「毒娘」というタイトルから、少々敬遠してしまう人もいるかと思うが、なかなか癖になるストーリーなので、是非色々な人に観賞していただきたい作品である。
「家」という本来であれば安心である場所が侵略されていく理不尽な恐怖を、是非とも味わっていただきたい。
【作品情報】
タイトル:『毒娘』
監督:内藤瑛亮
脚本:内藤瑛亮 松久育紀
出演:佐津川愛美、植原星空、伊礼姫奈、竹財輝之助
ちーちゃんキャラクターデザイン:押見修造
2024年4月5日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開
配給:クロックワークス
(c)『毒娘』製作委員会2024
公式サイト
公式Twitter