劇場で観るべき「音楽」の強み
後日、しずか、スネ夫、ジャイアンと一緒にリコーダーを練習していると、再びミッカが現れる。草陰からは、これまた謎のロボット・チャペックがのび太たちを伺っている。
その日の夜、何者からの手紙で学校の音楽室に呼び出されたのび太たちは、音楽準備室の扉から宇宙に飛び出し、人工衛星“ファーレの殿堂”に導かれ、その先にいたミッカとチャベックと再会する。
聞けば、彼女たちは「ファーレ(音楽)」をエネルギー源とする「惑星ムシーカ」の出身で、滅びゆく星から脱出し、ファーレを求めて、音楽のある地球にたどり着いた音楽の民の生き残りだという。
作曲家であるチャペックは、のび太たちのことをムシーカの絵本に出てくる「音楽の達人“ヴィルトゥオーゾ”だ!」と、歓迎し、ファーレが不足して機能停止になった、ファーレの殿堂を復活させたいと懇願する。
そして、ドラえもんの道具「運命の赤い糸」により、のび太たちは楽器の分担を決められ、パーカッション・しずか、バイオリン・スネ夫、チューバ・ジャイアン、リコーダー・のび太というパートに振り分けられる。さらに、「音楽家ライセンス」という道具により、楽器が意思を持ち、演奏者を指導するという構図となり、のび太を除く3人はみるみるうちに上達。彼らの演奏でファーレの殿堂の機能を取り戻してゆく。
しかし、ファーレの殿堂と地球には、宇宙に潜む捕食生命体「ノイズ」の脅威が近付きつつあった…。
さて、『ドラえもん』映画の歴史は長い。
初出は、『ドラえもん のび太の恐竜』(1980)であり、それ以降、ほぼ毎年、新作が公開され、その度に宇宙人のいる惑星、海底、魔法の世界など舞台・テーマを変え、ドラえもんとのび太たちが、その世界の危機に立ち向かっていった。
1996年、原作者である藤子・F・不二雄没後も、旧作のリメイク、意思を継ぐ制作陣たちによる、オリジナル版映画が公開され続けている。
今作であるが、タイトルを知った時点で、筆者は非常に唸った。
なぜなら、ドラえもん映画史上初の「音楽」がテーマであり、それこそ「音」を表現できる映画やアニメでなければ伝わりづらいであろうストーリーであるからだ。
服部隆之氏作曲における、のび太たちが演奏する劇中曲は、非常にわかりやすいオーケストラであり、「音楽」がテーマである本作において、十二分な効果を発揮している。
ひとつの「音楽劇」として鑑賞できるクオリティーであるので、劇場で鑑賞することをなおさらお薦めしたい。