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“好き”を全肯定する、無防備なラブストーリー

©2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 ©高木ユーナ/講談社
©2024不死身ラヴァーズ製作委員会 ©高木ユーナ講談社

この奇妙な現象への説明が全くないままに、長谷部は毎回姿形を変えて現れる“運命の相手”との「運命の再会→両想い→消えてしまう」を何度も繰り返していく。

両想いになったら相手が消えてしまうのに、なぜ長谷部はじゅんを「好き」でい続けられるのか?

その理由は一つ。「好き」にまっすぐだからだ。こんなにも可哀想な現象に見舞われても長谷部は“運命の相手”に「好き」をぶつけ続ける。「消えちゃうよりなら、好きにならないほうがいい」という諦めの素振りを一切見せずに、自分の「好き」に正直であり続けるのだ。

タイムループモノのあるあるとして、物語後半に「ループの先輩」が登場する。特殊な現象の経験者は、その現象に悩む主人公にヒントを与える。本作でその役割を担ったのが、「両想いになった相手が消えてしまう現象の経験者」である花森(前田敦子)だ。彼女はいわばこのジレンマに折り合いをつけた人間として、「運命の人の消失」に悩む長谷部に語りかける。

花森「誰かを好きになるよりも、一緒になってからのほうが人生長いよ」

経験者ならではの優しいアドバイスとも取れるが、裏を返せば「好きじゃなくても一緒にいることを選択したほうが人生豊かに過ごせる」というあまりにも残酷な一言とも取れる。長谷部の「好き」が否定された瞬間であり、「諦めのまま人生を過ごしなさい」という悪魔の囁きのようにも聞こえる。

もちろん、好きにまっすぐな長谷部がそんな言葉に耳を貸すはずがない。その純粋すぎるまでに「好き」を貫く長谷部の姿に、我々観客も胸を熱くせずにはいられない。だからこそ『不死身ラヴァーズ』は、映画の紹介文にある通り「“好き”を全肯定する、無防備なラブストーリー」なのだ。

「大っ好きなクリープハイプのライブに行きたい!」一心で北九州から東京に向かってチャリを漕ぎだす女子高生たちの映画『私たちの、ハァハァ』(2015)を撮った松居大悟監督らしい、好きを燃料に走り続ける人の青春をイキイキと描いた作品だ。

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