人は完璧が崩れたときに心が動く
先の展開を書いてしまうがこの完全ともいえる友情が壊れていくのがこの作品の見どころといえるだろう。
一見完璧に思えるものほど、それが否定されたときの衝撃は大きくなる。そして、人はその完璧が崩れたときに心が動くものだ。例えば、誰にも破れないだろうと思われた記録が塗り替えられると人は驚き興奮する。
「ふれる」という存在で完璧な友情を作り、それを徐々に壊していく演出が青春三部作とは少し異なる。
本作は谷から始まるのではなく、山から始まっているのだ。そんな高い山となった友情がどう壊れていくのか? 一般的な物語で友情を壊すための定番といえば何か? と考えると「恋愛」という答えの1つが自然と浮かんでくる。
実際、本作でも恋愛感情が3人の友情に影響を与えてくる。そういう意味では青春三部作と似ている。
アルバイト中の秋が偶然ひったくり犯と遭遇し、バッグを取り返すのだがそれがきっかけで浅川奈南(石見舞菜香)と鴨沢樹里(白石晴香)の2人の女性と知り合う。
さらに、なんと男3人で暮らしていた家に一緒に住むことになる。奈南がストーカーに追われていたためだが、波乱の幕開けである。男3人と女2人とペット?の「ふれる」という5人+1匹。ただじゃすまなそうだ。
ここから、誰が誰を好きになるかも見どころで、随所に出てくるヒントを探してみるのも面白いだろう。
わかりやすそうなのもあれば細かいのもある。例えば、樹里が秋から「静岡に行くかも」というLINEをもらったときに一瞬外にいるシーンが映る。
誰かと待ち合わせているかのようなシーンにも見えるが、かなり短いので気づきにくいかもしれない。というように、様々なシーンにヒントは隠されている。
誰が誰を好きなのかというのは青春三部作にもあった。そして、つねに観客の予想を裏切ってきた印象だ。特に『心が叫びたがってるんだ。』ではクライマックスに意外な告白が待っていた。